免許を取れた日
「免許を取るには、年齢位の金がかかる」
誰かさんが言ってた通り
33歳にして33万という金を
母ちゃんは惜しげもなく貸してくれた
二俣川で筆記試験に受かり
初めて免許を手にした日
帰りの駅のホームには
旅のトランクを置いて柱に凭れる
風になった寅さんが
「人生を、粗末にしちゃぁいけねぇよ」
それだけ言って、寅さんの姿は
ふわりと消えた
母ちゃんよ、30過ぎても独り身で
ろくに家にも帰らず
今日も街から街へふらふら歩く
根無し草のこの俺を
どうか許しておくんなせぇ
5日後は
母ちゃんの64回目の
誕生日
昔より髪の薄くなった親父と
杖でなんとか歩く婆ちゃんを後部座席に
少し背すじの丸まった母ちゃんを
助手席に乗せて
運転席に座った僕は
フロントガラスを見据え
ハンドルを握り
久しぶりに家族4人で
夕食を食べに行こう
コメント
家族ってなんとも言えないストーリーを感じますよね。
自分のストーリーも重ねてみて二度味わうような。
そのストーリーはもちろんのこと、寅さんが降りてくるあたりがこの詩のとても味わい深いところだなぁと思いました。
私も、神奈川出身ですので、二俣川にはお世話になりました。(笑) 寅さんをなぞった情景、いいですね。
それぞれの家族にスト-リ-があることを、思います。 寅さんの存在で、この詩が成り立っていると思います(^^)
二俣川は遠い記憶になってきましたが、寅さんの存在は、時を越えていますね (^^)
個人的に、会えていない実家の皆に、さらに会いたくなる詩でした。
人と会う時間の大切さを思う、ご時世です。