記憶
笑みなく終えた会話の跡には
角ばった鉱石の破片が
うすぐろい空へ帰っていく
雲のすきまを通る頃には
小さな針状の霧となって
ぼくのからだにつきささる
滲が目立つ爪はそうやってできた
爪から伸びる青白い指には
くつきり浮かぶ青白い静脈が
それはぼくが存在する証なのだが
血管内のヘモグロビンと
対話することはできない
部分と全体とはそういうことだ
鳥は嘴を知っているが、嘴は鳥を知らない
眼は風景を知っているが、風景は眼を知らない
母親は子宮を知っているが、子宮は母親を知らない
だが世界は生に向かっていく
死に向かうことは対話の始まり
実在と架空の境界
感覚と空想の裂け目
それは遠い日の記憶
コメント
鳥は嘴を知っているが、嘴は鳥を知らない
眼は風景を知っているが、風景は眼を知らない
母親は子宮を知っているが、子宮は母親を知らない
だが世界は生に向かっていく
良いですね♪
おおくの、美しい言葉があります、そしてそれらの美しい言葉は、それぞれの方角へと、舞い上がり、星のエキスとなるでしょう。さらに美しい鉱石となるために。
感想に語彙がまったく足りてませんが、めちゃくちゃ良かったです。まずは、それを伝えたくて。
@レタスさん、有り難う御座います。良かったです。詩作は気付きがいつもあります。
@坂本達雄さん、有り難うございます。言葉が組み合わさって、美しさが出てくれました。嬉しいことです。
@あぶくもさん、有り難うございます。詩のイメージに共感頂けて嬉しいです。