セレーネ
手のひらですくった水は鏡だった
映った月を飲み込んで
あの日を歌った
女神は言葉もなく優しく微笑んで
ぼくを祝福してくれる
ひとつだけ願いを聞いてくれるなら
この十五年を巻き戻して欲しい
ぼくたちは若かった
あの頃はとても激しくて
辛いことも嬉しいことも多くて
もっと優しくできたなら
いまはもっと幸せだったのかもしれない
いや、変わらない日々に浸りながら
珈琲を飲んで、買い物に行き、食事をし、ニュースを見る
こんなありふれた事が幸せというものなのだろう
月の女神よ永く平穏な日々を授けておくれ
ぼくたちの夜を見守っておくれ
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