時計

僕が
君の耳にむかって話している
春に
君の耳に向かって

距離は
浅い呼吸の真似をして
外側からも
内側からも
しだいに失われていく
君と僕が近づいていくのと同じくらい
世界と僕らは近づいていく
近づき切ったときにはじめて
世界が空っぽだったことが明らかになる
長い年月をかけて
僕らという空間が浄化されるんだ
プーチンがウクライナを浄化しようとしたって
イスラエルがガザを浄化しようとしたって
世界の原則が僕らを浄化する本当さには
到底およばないんだ

僕が
君の耳に向かって話している
春に
君の耳に向かって