奇蹟
くたびれた夜が
アーケードの片隅の暗がりで
おびえた子猫みたいに震えている
午前4時
始発が動き始めるまで
あと1時間たらず
そんな時間まで営業してるという
ただそれだけの理由で
酔っ払いどもが
誘蛾灯に集まる羽虫のように
ふらふらと千鳥足で辿り着く
今夜の最後の場所
油まみれの唐揚げ
しおれたフライドポテト
生ゴミみたいなシーザーサラダ
泡の消えた生ビール
そんなものがテーブルに並べられる
ゴミ捨て場みたいな居酒屋
テーブルに突っ伏して眠る
ツーブロックの若いサラリーマン
呂律の回らない舌で
誰も聞いてない武勇伝を語るおじさん
トイレに行ったっきり帰ってこない
ミニスカートの女の子
不機嫌そうにスマホをいじり続ける
冴えない若いホストたち
黙々と焼酎お湯割りを飲み続ける
年齢も職業も性別も何もかも不詳の人
みんな人間で
みんな生きていて
そして
いま
ここにいる
それだけが共通項
それ以上に何が必要だろう
おめでとう
みんな
いっしょに乾杯しよう
夜明けまで
まだ少し時間はある
コメント
よきです。
@たちばなまこと さん
ありがとうございます◎