遠い呼び声
ある日を境に白兎は嫌われてしまった
傲慢さと気狂いのせいで
仕方なかった
とはいえそれを理解する人は少ない
人参を投げ合ってふざけた日はもう遠く
他人と自分はかけ離れた存在だと
気付くことが出来たならお互いに傷付くこともなかったのに
白兎と黒兎は仲が良かった
たくさんお喋りをして
転げ回って笑い合った
それはもう随分と昔のこと
今は昔とは違う
だけど話がしたい
白兎は黒兎にそう言ったけど
黒兎はそれに対して何も答えないのだった
戻らない遠い日々を追いかけても
それはただ幽霊船に住む亡霊を追いかけているようなもの
温かい手に触れることは出来ない
白兎は悴んだ手を丸めて人気のない道を歩いていた
夜桜の蕾が少しずつ膨らんでいた
顔を上げ願う先には春満月
全てを照らす道筋となる
月には兎が住んでるんだって
本当か嘘かそれは誰にも分からない
コメント
子供のころ、しろいうさぎとくろいうさぎの絵本が大好きでした。うろ覚えですが、そうだ結婚すればいいんだ、と思いついたときの黒い兎のはっとした表情が好きでした。
すべてのものはいつか終わる。童話だって。月に童話の続きがいつまでもあれば良いのですが、もうそう思うこと自体が童話みたいな昨今の状況です。
@たけだたもつ
こんにちは。コメントありがとうございます。童話はたまに昔読んだ絵本など、思い出す時がありますよね。ワクワクしたり、ハラハラしたり。でも、そうですね。時は過ぎていきます。それでも、何かまだ書くことがある気がして。月に童話の続きがあればいいのに、私もそう思います。最近、あまり詩が書けないのですが、書けるようになるといいなと思います。