Reverie
初期フォーレはロマンチックなのに冷たい
地中海の陽気が降り注ぐギリシャの水は
遠い伝説の中で凍りついているからだ
フォーレが語る神話の中に
フェアリーはいてもフォーレ自身はいない
後期フォーレは筋肉が強ばって
ベッドの上で動けなくなるのだ
旋律は硬く言葉は少なく
うわごとのような息づきだけが残る
存在してはいけないのだ、
夢想《Reverie》とは
自分が存在しない世界との
美しい関係のことだから
しかし抽象的に壊れた楽曲に
なんと激しい“自分の”感情の宿ることか
強張り震えた指先からしか表現されない
まさに老人の性欲のようなこの苛烈さは
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