檸檬

麦焼酎のロックに檸檬を絞れば
金粉になって
グラスの底に沈んでいく
センチメンタルな別れのことば

振りはらおうと
あがいている姿が
やはり
黄色くなった泉をのぞいている

 曲がりくねった
土塀の続く小路、
行き着く先に
かつての口づけが埋まっている

 埋まったくちづけの呻唸を
時折 聞きに行くのも雨の夜

 しゃぶって齧ったレモンの皮を
流し台に捨て、唯
無性にねむりだけを恋う

投稿者

滋賀県

コメント

  1. 檸檬、というと、梶井基次郎の掌編とさだまさしの歌を思い出します。口づけ(くちづけ)という言葉が、印象に残りました。埋まっている。呻唸。

  2. 檸檬の漢字表記が冷ややかなイメージで、酸味が傷口に染みるような表現だったり、強めなお酒と情事の余韻も色濃く、なのにさわやかな読後感。情景が鮮明に降ってきて、痺れるような詩でした。

  3. @長谷川 忍
         様へ

     お読みいただきまして、ご感想のコメントをお寄せくださり嬉しいです。
    どうもありがとうございます。
     「檸檬」は、ずっと書いてみたいオブジェでした。さだまさし さんの檸檬は、
    好きな歌です。…(笑)

  4. @ザイチ
       様へ

     どうもありがとうございます!m(_ _)m 大変嬉しいご感想のお言葉を
    いただきまして、この作品を書けたことに自分で良かったと素直に…
    思えました。^ ^
     この詩は初稿から、ことばをかなり練りました。けれども頭で考える
    わけじゃなく構成は、ごく自然にまとまった作品です。産み出す迄に、
    (ペンを取る迄に)ずっと待ちました。自分で書ける時の、訪れるまでを!

  5. レモン、とカタカナにすると、爽やかさとか若さ、初恋
    とかいったものを連想しますが
    檸檬、と漢字にすると、爽やかさもありつつ
    あの独特の苦みによる痛さ、というものを連想させてくれます
    アルコールに酔って眠ってしまいたい気持ち
    解るなあ、としみじみ

  6. @雨音陽炎
        様へ

     お読みいただきまして、ご感想のコメントをお寄せくださり
    どうもありがとうございます。^ ^
     ご注目くださった最終連。苦味あるレモンの皮を、しゃぶって齧る。
    ここのリアリティが自分で気に入っております。そして眠りだけを、
    恋う。この心境を、しみじみ感じとって頂けました事、とても嬉しく
    思います。

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