翠雨

 

 露路裏に女が居るのを見た
 薄いスカートは
 夏がとっくに通りすぎた様に
 疲れてみえた

 脇道ではライトがいくつか点いて
 夜が 始まるのを見た

「まいどおおきに!タナカコーヒーです」
 数軒の飲み屋や、お茶屋さんへ
 おかもち提げて出前のセットを下げに回る

 近くを流れる鴨川べりで開き始める傘
 先斗町通りを小走りで店まで戻る女子高生
 その豊かなる頬の血管、
 歓びの日に
 悲しみの日に
 髪一筋の狂いが全てを狂わせる
 あやうさと共に
 燃えたぎるもののあった時代

 月隠す暗雲ですら
 微笑みて見る稚い瞳には
 夜の影も ひたひたと
 近づけども追いつけず

 雨音ころがる小路、見る間に暗さが充ちてくる
 
 
 
 

投稿者

滋賀県

コメント

  1. 生活に疲れきってそうな女と
    まだまだ未来は輝かしいものと信じてそうな女子高生
    二人の女性の対比が絶妙ですね

    かつては自分にも、あんな頃があったわなんて
    懐かしがって思い出に浸る、というよりは
    失くしてしまったもの、捨て去られたもの
    もう二度と手にできないそんなものたちを思って
    こんなふうになるなんて
    きっとあの娘はまだ知らないのねと
    乾いたため息と笑いを浮かべているような
    そんな気がしました

  2. 雨は饒舌、いや雨に打たれるものたちの饒舌さよ。

  3. @雨音陽炎
        さまへ

     こんにちは。「行方知れずの罪」の私のコメントにくださった返信、
    とても嬉しかったデス。♪
     私も、一度短編小説に挑戦してみた事がありました。一作だけです。
    その前には、詩の連載で綴る詩小説にも挑戦してみました。どちらも
    拙作でありますが、完成する事が出来た時の満足感は大きかったです。
    人物の描き方や話を繋げる事の難しさを実感しました。
     この詩は、十代の自分の実体験に基づいて書きました。一年前の「少女」
    という作品を「翠雨」というタイトルに変えて改訂しました。
     リリーに根性!さえあれば、この「翠雨」は短編小説にもなるだろうと
    感じています。(^^;
     読んでいただいて、ご感想のコメントをくださり、どうもありがとうございます!⭐︎

  4. @あぶくも
         様へ

     お読みいただきまして、ご感想のお言葉をお寄せくださり
    どうもありがとうございます!嬉しいです。(*^^*)
     「翠雨」というタイトルが気に入って、日ごと濃くなる
    青葉濡らして降る雨の暮れどきに、ドラマ性を託しました。
     

コメントするためには、 ログイン してください。