うたは号泣する
カンナもグラジオラスも号泣する
芙蓉もシルビアも号泣する
決してみずからをローデシアとするのではなく
綱渡りする人間の荒い手綱で
むしられた高度を上げる自然(じねん)の
鳥打帽のひとから道を聞くこの迷い道の
バサラも桃源郷も号泣する
ナーススティションも老人クラブも号泣する
美の墓場から正義の重たげな左手
正面玄関からタヒチの丸木舟までも
年々にわたしをかどわかす道連れの
三日月色の少年兵までも
遠くて、その頬はあきらかに火だるまである
ですから、一度だけの肉体のキスをささげて
こわれかけた号泣のわたしを
羊たちの高層ビルに
かさなり、かげとなり、むすびつけようとする
その温度計
わたしたちの忘れている鞭打ちの刑で
しばらくは眠りたい。
あなたの右の胸に
快楽の乾燥する
とつぜんの。
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