廃景

ボタの粒粉が混じつているやうで
この地区の風下は、始終いがらつぽい
巨きな眼帯で口を隠した若い女が
空咳ひとつふたつ、みつつ目で掠レた

炭住の跡にも計画住宅が犇めき
そう若くもない女、喘息持ちの息子と
宗教施設のシンボルを眺めながら
乳液よつついつつ、むつつ目で搾レた

父 しんだ 母 いきてる
妹 とついだ 私 いない

国体広場のメタセコイヤは乾血色だし
あンの女ら、なンぼやつたンかと
真昼間の暗がりで口を露わにサセるも
涙ななつやつつ、ここのつ目で痴レた

投稿者

コメント

  1. 埃っぽく寂れた炭鉱の町を尋常ならざるテクニックによって耽美的に見せるとは流石です。

  2. オレが勉強不足で他の色々な詩人の作品をあまり読んでないってのもあるけど、トクサさんの詩にしか出てこない単語とか言い回しってのがあって、それが情のない叙叙詩たる所以かなあと思います。

  3. なんだろうこの昔と変わらないATGみたいなあの感じが冒頭から好き。

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