キクオリ

キクオリ

とうとう追いついてしまった
角のすみっこの思い出
六つも離れていたのに
寝て、起きて、寝ている隙に
いつのまにか追いこしていった
何も変わっていない
なんてこともない
そんなあやふやな日々の間に
あの日の答えも消え入りそうな
小さな声にもならない声
自分ではない誰かの面
両手に浸る澱んだ瞳
忘却と空虚の千本ノック
(鍛えているわけでもないのに)
ああ、あんたは……
あんたは弱い
あんたは情けない
あんたは臆病だ
あんたは優しすぎる
あんたは狡い
あんたは恐い
あんたは憎い
あんたは醜い
あんたは、言いたいこともいわず
ただただたえてたえてたえて
壊しちまった
もう、今となっては直せないよ
声にもならない呻き声
他ならない自分の面
両手を繋ぐ朧な瞳
乱雑に闇雲に身勝手に
けれどはっきりと伝えてきやがる
底の底のくらいあかり
(見るんじゃねえよ)
ああ、あんたは……
あんたは弱い
あんたは怖い
あんたは情けない
優しくなんかない
狡くて醜くて臆病だ
それなのに無遠慮に入ってきやがる
ぽつん とした眼
どうしたって笑ってしまうよ
また歩こうとしてしまうよ
苦しくなってしまうよ
泣き虫に、なっちまうよ
それでも何千何万回でも一度きりでも
きっとまた見つけてしまうって
掬ってしまうって
あきらめさせる 眼

あんたなんか大嫌いだ
 
 
 

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