狂いを教えられた日曜日の涼朝

一緒、迷ったが
バスで駅に向かう
なかなかバスが来ない
次の電車を逃すと
乗り合わせが悪くなる
浪費だ

西側を気にする
なかなか来ない
いつのまにか隣に女性がいる
少し濃い顔立ち
30そこそこだろうか
上品な服装
薄い紫のカーディガン

いつのまにかバスが来る
7時半の急行にはギリギリ間に合わない

街道は空いている
信号をパスしていくが
まあ、一本遅い電車で行こう
30分の過ぎ去り
人生の誤差以下か

補聴器を取りに行く
早く帰りたい

バスがロータリーへ滑り込む
ちょうど上りの急行がホームに入ってくるのが見える

薄い紫の女性がバスの出口に移動する
女子高生が続く
日曜の早い朝
開くと薄紫が飛び出した
全速で階段まで滑り込んでいく
俺も後に続く
なに?彼女は諦めていないだと?

列車はホームに入っている
階段を駆け降りる
女子高生も吊られるように走る
少し遅れる
下りの階段はサンダルでは不利だ
薄紫は颯爽と行く

毎日走って駅に飛び込んでいるよう
改札をヌルッと抜けて行く
人はまばらだ
エスカレーターまでダッシュ!
右側を駆け上がる

いける
彼女は間に合う

いや
違う
俺は狂っていたはずだ
もっと全速で生きていたはずだ
なりふり構わずに周りと揉めていたはずだ
小慣れた蛇のように薄紫は動く階段を這い
脱皮するように消えた

絶対に間に合う
全速でかけろ
意地を見せろ
シャレなくて良い
本当にかっこいいとはなんだ!
死ぬ気で生きろ
時が止まって見える
エスカレーターを全速で登れ
開いたドアまで霊体のように標ができる
ケン•マイルズが5000回転でコーナーに飛び込んでバックストレートで230キロ出す
24耐
俺は東京の朝の一瞬でさえも死速で進めないわけはないドアは光ってホームのオレンジの線が問いかけてきてカラスの鳴き声が聞こえたか?一昨日は会社の方向性を決めたがもっとやれたはずだ周りに気を使う必要は無い全て来期の計画は見直せ絶対に間に合うブザーと閉扉の束の間を止まった時が歓迎しゴールを切る薄紫の姿は見えないもうどうでも良いその列車に乗ったことが全ての事実だ昨夜のビールが少し汗で抜けるこんなに走ったのは何年ぶりだろう間に合った間に合わないわけが無いバスから見た列車の屋根が頭にこびりつく薄紫は飛び出して素早くほんの少しだけサイドワインドしながらストレートにエスカレーターまで行き最終コーナーに消えた急行は走り出す
女子高生は途中で諦めていた
いつの間にか新宿に着く
迷路のような迷宮で薄紫が追い越して行く
その時ほんの一瞬だけ目が会ったように美化している濃い顔立ちだ

投稿者

東京都

コメント

  1. バスも女も急行も走っておりますな、そして筆も。

  2. 俺は狂っていたはずだ、と言い聞かせるところからのスピード感が駅の雑踏と相まってええですよねー

  3. やはり後半の狂気を意識してからの文体の変化による時間速度の変化が面白いです。過ぎる時間は一瞬ですが文字量を多くすることで長い時間が凝縮されたような効果をあげていますね。

  4. @あぶくも
    あぶくまさん、ありがとうございます
    確かに全て走っていて走れば走るほど止まっているかのようでした
    今朝は間に合いました
    薄紫に教えられました

  5. @三明十種
    三明十種さん、ありがとうございます
    必死に生きていると時に狂っているように見えるし、狂ってるくらい走らないと電車にすら乗れない朝

  6. @たかぼ
    たかぼさん、いつもありがとうございます。確かにおっしゃる通りだ!!狂っている以降は回転数がめちゃくちゃ上がってスピードが乗っているのに内容を濃くしている!分析してもらうと、自分の文書も見直せます。本当にありがとうございます

    ちなみに田舎から帰る時もレンタカー屋さんから駅のホームまでスーパーダッシュしました。今日は走ったからビールが美味いはず!

  7. 前半の周りを気にしているところも良かったのですが、
    後半の盛り上がりかたが、しっかりと狂気じみてます。
    日々、ご苦労様という気持ちで私も毎日を過ごしたい
    ものです。素敵な作品、ありがとうございます。

  8. はじめまして

    これは地方から東京・新宿へと向かう日曜の朝の一幕なのでしょうかね
    バスがなかなか来ないというの、次に乗る電車に間に合わないかもしれない
    もうこの時点で何か焦燥感みたいなのが感じられますよね

    もう皆さん、素敵なコメントを書かれていらっしゃるので
    >迷路のような迷宮
    言葉が重複しているように感じました
    迷宮なんだからそりゃ迷路なんじゃない、と(スミマセン、こういう細かいとこ気になっちゃって)

    後半の畳みかけるようなスピード感
    こういった描き方もあるんだな、と勉強になりました

    ありがとうございました

  9. @足立らどみ
    足立さん、ありがとうございます。後半、トランス状態で書き上げました!
    素敵な作品といってくださり嬉しいです

  10. @雨音陽炎
    雨音さん、はじめまして!
    コメントをありがとうございます。
    勉強になるだなんて、恐縮です

    迷路のような迷宮について
    1,バスから見た列車の屋根が頭にこびりつく、から始まる後半の部分は再度バスの降り口から急行までをループしてますよね?それは急行の車中で何度もループしているわけです。新宿に着いてその入り組んだラビリンスの中でも狂気感とライム感とループ感を出すために迷路のような迷宮と書いて、そのすぐ後に急行の入口以降出てこなかった薄紫の女性が現れます
    2,これはズルいですが、そもそも狂っているのでライム感を出すために意味の無い言葉を入れたりもします!

  11. 狂いを教えられた日曜日の涼朝。
    いつの時代にも、狂っていない「人」が居るとしたら、その人は、とても 貴重な存在だろうと感じます。ああ、そういう私は、日々 狂っています。ふふ。

    改札をヌルッと抜けて行く という「ヌルッと」という表現が、私的には、意表を突かれてツボです。

    それと、その時ほんの一瞬だけ目が会ったように美化している濃い顔立ちだ、という最終行が 特に好きです。^^

    (那津さん、お久しぶりです。帰ってきました。また、こちらで お世話になります。よろしくお願いします。拝礼^^)

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