舞踏 (三)

蜘蛛が一匹、舞台から消えた
羊の糸で編んだ上着を釘にかけ
ひとあし前に出して
まなざしを一兆の掛金とする
とくには何も求めていないサンダルで
肩がぶつかる写真展の機材にそそのかされる
わざわざ姫りんごの晦渋するブラウス姿の
何億回も引き出しを開けて閉めて
くたびれたこの首まわりと精神の海進する
土地の神経系統のほぐれた朝に
バビロン印のパンツをはいてみる
セイロンの茶畑のいちまつの不安によれば
特殊な刑罰によって四葉園の鹿狩りが承認されて
海の生物であっても
わがはらから、潮っぽい脇腹に働きつつ立てりと言う
今池橋のあたり日光浴する
時の総理も綿菓子を手に
モダンなジャズのスタイルで清められた水道橋
我が都市空間のひしゃげた泪通路
まぼろしの映画館の跡地にて
戦艦大和の実物大のお披露目である
格子窓の中で設計図を左右に振る人がいる
あの方がわたしのために、スクリューを起動させる
海水の渦巻のとんでもない力でおしやられて
マイセン陶磁器のあざやかな失地回復すると言うこと
沈む戦艦のただ沈黙の時間を触診する彼のために
荒野のシビル、電気軌道のモーター
デーモンのウイスキーの広々と
タチアナのめざめるころにはあたたかくしてあげて
舞踏そのものが廃墟となる
逃げ出したコクリコ。

投稿者

岡山県

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