あの声で蜥蜴食らうか時鳥(新釈ことわざ辞典その5)
ああ云えばこう云うって
あなたがあんなふうに云ったから
こっちはこう返したってだけなのに
なんでそんなに目くじら立てるのかしら
なにも口答えもせずに 黙ってはいはい頷いていれば
あの人たちにとっては満足なのでしょう
自分たちの方こそ すぐにああ云えばこう云うくせに
こっちが気づいていないとでも思っているのかしら
怒りは敵だと思えというけど
我が身を滅ぼす危険があるのなら
どうしてこんな感情を人間に植え付けたのかしら
時々ね もの凄い怒りがあとからあとから湧いて出て
焼けつくされてしまいそうになるの
抑えなきゃ 抑えなきゃって思えば思うほど
その炎は勢いを増すばかりで
いつもいつもいっつもいっつも
悪いのはわたしなの? 一体わたしが何をしたっていうのよ
わたしにばっかり当たらないでよ 責めないでよ
ぶつける相手が違うでしょうに
売り言葉に買い言葉
売っているものにもよるでしょうけど
自分の癇癪に訴えかけられたら
それはもう買うしかないでしょう
でもこれには注意が必要なんです
買い手が調子に乗ってると
どんどん売り手が値を釣り上げてきますから
適当なところで妥協しないと
馬鹿高い対価を支払わされるはめになりかねません
注意が必要です
人を見たら泥棒と思えって
そうしたら 自分以外はみんな泥棒ってことになるのかしら
いや 他人から見ればわたしもきっと
みんな盗人だ みんな泥棒だ
奪い合わずにはいられない
ああ 一体わたしは何を盗んで生きているんだろう
背に腹はかえられない
だけど 腹に背はかえられないのだから
どっちもどっちよね
この際 腹を割って話しましょうよ
その背中に背負ってる重たい荷物
そろそろ降ろしてもいいころだと思うわ
あいつの面の皮を剥いでやりたい
化けの皮を暴いて 本性を曝け出してやりたい
って面の皮一枚剥いだところで
一体何が暴けるというのだろう
他人は 人の重箱の隅をつっつくのが
実に好きだ
とくに自分にないものを持っていたり
みんなにちやほや大騒ぎされている人を見ると
きっと裏になにかあるに違いないと
探りたくて仕方がない
何を見つければ満足なのだろう
何があれば満足なのだろう
人の重箱つっつく暇があるなら
まずは自分の重箱を綺麗に洗おうよ
話はそれからにして
青柿が熟柿弔う
わたしは熟しきったとろっとろの柿
子供のころから結構好きでした
もう透明に近くなったそれを
スプーンでほじくって食べるのが至福でした
まだ青いガキの柿には
その良さがわからないんだろうな
弔ってもらっては こっちが困ってしまいます
骨が粉々になるくらい身を砕いたら
頑張る前に 死んでしまうよ
暗がりに鬼はいますか
逃げても逃げても 追いかけてきますか
凶器は持っていますか
金棒ですか 包丁ですか
スタンガンかもしれない
催涙スプレーかもしれない
眠らされて 気絶させられて連れ去られて
どこか山の奥の方に棄て去られたりしますか
そのとき わたしがいなくなったそのとき
探してくれる誰かはいますか
何でも疑ってかかるのはよくないことかもしれません
しかしどうしたものか 手放しでひとを信用できるほど
わたしはもう素直にも無邪気にもなれそうにありません
ところで 鬼とは一体誰のことなのでしょうか
それは他の誰でもない
わたしの内側からじっとこちらを見つめている
もう一人のわたしなのかもしれません
満身創痍
この頃じゃ 起き上がるのさえままならない
それでも それでもさ
こんな使い古された粗大ごみにさえ出せないような躰でも
まだまだ使えるところがあるのなら
まだまだ使っていないところがあるのなら
躰のぜんぶ使い尽くせ
己のぜんぶ使い果たせ
エレカシの歌じゃないけどさ
あしたのジョーのラストシーンじゃないけどさ
燃え尽きて 真っ白な灰になるまでは
まだまだ生き尽くさないとなってさ
へへ
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最後までお読みいただき、ありがとうございます
おそらく誰も求めちゃいないでしょうが
ことわざに物申す第5弾
一応、完結篇という形にしてますが
気が向いたらまた描くかも(^_^;)
その節はまた、あいつ懲りずにやってらあ、と
思っていただけたら幸いです(#^^#)
コメント
私にも鬼が在りますよ。
しかし、私の鬼(私自身)は、気が小さいので、私の鬼は 小鬼です。ふふ。
この小鬼、優しい鬼です。悪も善もその他もあります。ちなみに、この小鬼(私)の悪を、悪は肯定しています。そして、善もあるのです。
そもそも 自然や宇宙の立場から言えば、善も悪もありませんよね。
でも、人間には、善や悪のルールが無ければ、社会ではやっていけない。バランスですね。
まあ、そういう私は、至らない人間ですが。なので、その時その時に、出来るだけのことをやっていくだけです。うん。ふふ。^^
この詩からは 切なさなども感じますが、この詩は 優しい詩だと感じます。
@こしごえ
さんへ
コメント、ありがとうございます!
う~ん、こしごえさんの中にいるのは
それは「鬼」ではないんじゃないかなあって
「鬼」というより、「内なる子ども」というものかも
なんて思っちゃいました
この詩で云う「鬼=もう一人の私」は
自分をよく見せようと取り繕ったり
誰かを貶めようとしている自分を見張っている自分
また、ふとした瞬間に顔を出す
自分でも思いもよらない「本性」のことを表しています
この「本性」という奴が表出したとき
抑えも何も理性が利かなくなり、何もかもを壊してしまったり
そういうものが私の中にも
もしかしたら他の人の中にも存在している
それが「鬼」と呼ばれているものの正体なのではないか
と表現しました
ありがとうございました
ごちそうさまでした。
>人を見たら泥棒~
>背に腹はかえられない~
>骨が粉々になるくらい身を砕いたら~
のところが特に好き。
@こひもともひこ
さんへ
コメント、ありがとうございます!
好きに思ってもらえるところがあって嬉しいです(^^)