切通しの道 (②)
国産のコンピューターがそのままの姿で置かれている部屋
うっすらとした埃によって
わたしが来ないことも計算に入れていた
電源を入れると、にぶい音がして
〈わたしを起こしたのは誰だ〉と声がした
わたしは誰でもない者だ
しかしおまえに聞きたいことがある
〈神か?それとも精霊の類か?〉
人間がいない今となっては彼の質問に答えることは意味がない
おまえはひとつの結論へと導くのか
そしてその結論は、この宇宙のどのあたりまで
届くと言えるのか
〈バッテリーがもう少ないのだ〉
〈わたしはもう考えたくない〉
室内の隅にわたしは腰をおろして
やがて停止する彼の最期の言葉を聞きたいと思う
意識は必要であったのか
〈ああ、意識はすばらしい、人間の意識は〉
〈けれども喪失は美しい、無の世界はとても魅力的だ〉
おまえはずいぶんと人間的なやつだな
それからわたしはその部屋を出て
水に覆われた星から過ぎ去った。
コメント
とても好みでした。
@たかぼ
たかぼさん、ありがとうございます。たまにはSF的なものも書いてみたくなります。