館長の話

水族館から
水族が溢れ出した
水族は移動を続け
乾燥地帯にも
幾ばくかの水分をもたらし
貧弱な草木を発芽させた

水族館の後には
館と館長だけが残った
館長の手の甲にはいつしか
プロペラが生えた
プロペラは空を飛ぶには
あまりに小さすぎたけれど
回せばほんの少し
指先が涼しくなった

長い年月が経つうちに
何の館長だったのか
すっかり忘れてしまった
それでも思い出そうとすると
淡い幸福感に包まれるので
幸せだったのだ、と思った

投稿者

コメント

  1. なんか摩可不思議な詩ですねーつかみどころのなさが詩なんだよなーと思うよねープロペラ生えるくだりが突拍子もなくていいですよねー

  2. この詩のタイトルと冒頭から来て、最終連が肝ですね。
    ああ、最終連を拝読して、こちらまで、なんだか幸せな気持ちになりました。

  3. @三明十種
    三明十種さん、コメントありがとうございます。近年の小説や漫画や映画は非常によくできていて、いろいろなものが絡み合って、伏線があって、それを回収して。それはとても面白いのですが、一方、何の脈絡もなく紡がれる、例えば神話みたいなものの面白さってありますよね。

  4. @こしごえ
    こしごえさん、コメントありがとうございます。幸せ、なのではなく、幸せだと感じること、が幸せなことなのかもしれないですね。

  5. @たけだたもつ
    追伸 失礼します。

    よく人は、幸せになりたい、とかって言うけれど、そうじゃないと思うんですよね~。
    『基本的には、』私の場合、幸せに 気付く ことだと思うんです。

    以下は、幸せについての 自作 五行歌です。

    ああ 幸せに
    気付くかどうか。
    花にほほ笑む人と
    花を踏む人の
    違い

    以上、五行歌。
    拝礼^^

コメントするためには、 ログイン してください。