君を掴む光
実らなかった小さな恋
金の匙でその舌先に蜜を置く
溢れる光の粉を幕に封じ込めるしぐさが
やけにぎこちなくそして愛らしく
君たちの手のひらを思い描いてきたシーンが
羽を獲て飛び立つ
忘れていた呼吸を促す
輪郭だけのおもかげに絵の具が滲む
あかいカボションが三万年ぶりに実り
たわわに零れようとする
乳房の重さに似て
決して噛み破ることは出来ない
膨らんだからだをあたたかい海に隠して
帆船を浮かべてやる
寝静まった波音に揺らぐ微かな声
知らない周波数につまみを合わせると
君たちを誘う信号が聴けるんだ
エッジを欠いた四角い海からドアを開け 終の営みへ
さようなら
お互いに一人きりの光に出逢えてよかった
春に見つけた香りをあちらこちらに振り撒いて
地球上の何十万人もが往き交う交差点で独り
モニターに君たちを探してしまう
サブリミナルを静止画として捉える力が
日増しに強くなってゆく
光たちに傷を付けず
誰しもが赦されて
ひとときの熱だけで愛し合え
眩さに転化するんだ
友だちのふりをした闇からの饒舌も
くだらない世間への実りのない言い訳も
負にしか振られない嫉妬の焔さえも
コメント
美術館で上映される現代美術家の映像作品を見ているようです。言葉が映像的なイメージとなって溢れていきます。
@たかぼ
さん
嬉しすぎるお言葉です!
ありがとうございます。
確かに映像が浮かんでおりました。
あかとか、きんいろとか。
@たちばなまこと
あと言い忘れたのですが、テーマとしては優しさというか、赦しというか、母性を感じてしまうんですよねやはりたちばな作品には。
そうなのよねー、たかぼっちも言うように母性ビンビンよねー。君たちってのがたちまこの子供たちと読むこともできるし、オレを含む読者すべてに向けられているようにも思える。
@たかぼ
さん、もし仰るように赦しや優しさがあるのなら救われる気がしています。
日常ではそんなに出ていないであろう母性を詩に昇華しているのかもです。
@トノモトショウ
さん。
ぽえ会にトノモトさんいると安心する〜。
実を言うと自分では母性が出ているのが不思議で。
読者も含めて人類の皆様へ向けているとも言え、自分のことを好意的に捉えてくれている(くれていた)人たちに向けております。
いつも読んでコメントくださってありがとうございます。
はじめましてかどうかよく分かりませんがはじめましてと言っておきますよー旧ぽえ会ゾンビの三明十種と申す者でございます!Dr.とショウ君と並びたかったので頓珍漢なコメント入れさせていただきますよーお二方が仰有ってる通り母性といわれれば母性なのかもしれませんし、僕が思うのはその詩人の持つやさしい何かなんではなかろうかと…○○愛なんですよ!って断言出来るほど美しい生き方は僕はしてないものねーしっかり掴みとってそれを詩にする術を(努力の賜物かどうかは分からんけど)身に付けている書き手だなーと…ありがとうございました。
@三明十種
さん。
コメントありがとうございます!!
お名前は拝見していた記憶。
最初は恋で愛のようで愛じゃないようななんか丸いものです。
それぞれを掴んだ光に手渡してたくさんさようならしなくちゃいけなかったなぁという回想と、1人しか愛しちゃいけない倫理への疑問と。とにかく最後の一文でめちゃくちゃ褒めてくださっててにやにやしています。嬉しいです。
よろしくお願いします。
美しく儚げでもある街の情景の中に、確かに灯る熱量を感じられました。
うん。こんなふうに街を切り取ったり街に切り取られたりして、物語は続いていくんだなあ。
@あまね
さん。
感想が詩みたいでいいっすね。
人の佇まいがひとつの街ということなのかな。
まず、タイトルを何度か読み返しました。
そして、詩行の濃密で豊かな密度をこの詩は醸し出していると感じます。
あと、生きている肉体のリアルもこの詩から感じます。
エッジを欠いた四角い海からドアを開け 終の営みへ
さようなら
お互いに一人きりの光に出逢えてよかった
ここは、さようなら ときっちりと別れのけじめを付けていながらも、出逢えてよかった という感謝などを感じさせる言葉だと思うんですが、ここ ぐっときます。^^
ほかのところも 感じ入るところが 所々にあって、読み応えのある詩であると思います。
たちばなさんの詩 読めて幸せ♪☆^^
@こしごえ
さん。
心がほぐれるような明るいコメントありがとうございます。
なんか季節柄イルミネーションを連想しました。
けじめと感謝、気づいてもらえておおっとなります。よく読んでくださっていて嬉しいです。
最終連目がいいですね。作者の、温もり、切なさが伝わってきました。モニターに君たちを探す場面、誰しもが赦されて/ひとときの熱だけで愛し合え/眩さに転化するんだ このフレーズも好きです。君たちの表情が浮かび上がってきます。
五感がビンビンに開く詩ですねー。
みなさんが母性というのもわかります。
「お互いに一人きりの光に出逢えてよかった」
の一行がもうたまりませんな。