母②
ゆっくりと
いろいろ想い出している
お母さん
貴女は私を産んだとき
大量出血して
輸血で肝炎に感染し
長期入院したと聴いた
私、生まれて来なければ良かったかもね
だけど、おそらくあれは
貴女が退院して
私を迎えに来たときの写真だろう
とても嬉しそうに自慢げに微笑みながら
私を抱いてる
あれは3歳頃
汚いことばを使いたい盛り
“ババア”“ババア”と嬉しそうに連呼する私を
叱ることなく楽しげに笑ってる
あれは5歳頃
人形遊びをしている私の横で
お母さんは人形の服を
鼻歌を唄いながら何枚か縫ってくれた
あれは6歳
幼稚園の夏の遠足
自分と私、お揃いの服を自分で縫って
貴女は自慢気に笑ってる
あれは小学三年生頃
お父さんが
ただ1度だけの恋をして本気になったとき
貴女は飲めないお酒を飲んで
私の布団に入り込み
一晩中
「りっちゃん苦しい。りっちゃん助けて」
と私を呼び続けたね
子供だった私は分からなかった
ただ、抱きしめてあげれば良かった
頭を撫でてあげれば良かった
遺品の整理をしている時
タンスの奥の缶の箱から
さくらんぼのブローチ、見つけたよ
複雑だった
持っててくれたのは嬉しい
出来れば着けてほしかった
「私の言う通りにしていれば間違いない」
そうだったかもしれない
安全なレール
ずっと先まで見えるレールの行方
だけど私は冒険したかった
貴女に反発ばかりして
ごめんなさい
貴女は私に幸せになってもらいたかった
お母さん
今度、お墓参りに行ったら貴女と話そう
いま、私はとても幸せなのだと。
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