内藤さん
よく来てくれたわね
こんなにいいお嫁さんいないわよ
優しくっていいこに育っているわね
あいさつが出来て偉いわね
あなたとはどうにも気が合うのよ
娘さんが大変なら
こっちに帰って来て一緒に暮らせばいいのよ
歳を重ねた同士気兼ね無く
一緒に生きていけばいいじゃない
彼女の前を通るとき
自分史上最高な声で
おはようございます こんにちは こんばんは
またお会いしましょう
人の営み
大きな砂時計の砂粒たぶん全てに触れてきた
ひと粒の熱 ひと粒の圧 色 色 色
あなたを金鉱石にした
間もなく1世紀にもなる目尻がいつだって
私たちを赦してくれる
あなたの挨拶とても素敵だったわよ
みんな泣いていたわよ
あなたも偉かったわね
大切な時間にかわいい寝顔を見せてくれたわね
あなたの気持ちはわかるのよ
わたしの息子も38のとき亡くしたから
子どもを亡くすってどれだけ辛いか
今でも思い出すわ 思い出すわ
涙が出ちゃうわ
いつでも遊びに来てちょうだい
お茶でも飲みにいらっしゃい
あなたも あなたも あなたも
「お母さんの夢はなあに?」
下の子が目を輝かせながら聞くの
お母さんはおばあちゃんになりたいの
内藤さんみたいなおばあちゃんになりたいの
長生きして100歳を目指すの
孫やひ孫が学校に行けない日があったって
美味しいおやつを用意して待っているの
ただ顔を見せてくれるだけで嬉しいのよって
いつだって笑って
*
コメント
昔、死にそうな気持ちになっていた時分、老人の姿を目にする度に、彼らがその歳になるまで生きてきたのだというただそのことだけの故に感動した経験を、私は忘れることができません。
自分も含めて、皆さんこの世に生まれてきて
生きている間、幸せに人生過ごしてほしい
健康に長生きして欲しいのは、その一つかな
目指すべき年長者がいるのは素敵なことですよね。戦後何年とか聞くと、今80代の方々は記憶のある年代に敗戦(終戦)を経験してらっしゃるから、もっともっと話を聞いておきたく思いますね。
そうした歴史を生きてさらに今を生きていることの尊さみたいなものを感じます。
お母さんはおばあちゃんになりたいの
ここのフレーズを読んだとき、なんだか、嬉しくなりました。にこにこしてしまいました。福をいただいたようで。
多くの人は昨日生まれたわけじゃないから、生きる術と、感情の持って生き方をそれなりに知っている。年齢を重ねればさらに喜怒哀楽をいっぱい越えてひとつの真理にたどりつく。
そうであるといいなぁ。おばあちゃんのように。
目指せ目指せ。
内藤さんのこと知らないですが、自分の中で勝手にこさえた内藤さん像が現れて、ああ、こういう人になりたいなぁ、と思いました。
たかぼさん
『死にそうな気持ち』という言葉が自分の中で奥行きを拡げています。どこかミステリアスです。
年配のひとが持つ潔さや包容力や察する力なんかを自分もいつか持ちたいと思っています。
らどみさん
その通りですね。
そして、生き抜いてきた勘みたいなものを受け継ぎたいな残したいなと思うのです。
あぶくもさん
話していると言葉にはなっていないそのひとの気のようなものが空間で遊んでいる感覚があります。この方は92歳で、これくらいの歳になると相手が話す前に何を求めているか自然に察して自然にマッチすることを話せる様になると、脳科学のエッセイ本で読んだことがあります。かっこいいな!と思いまして。
長谷川さん
おばあちゃんになれるってものすごく幸運ですよね。今の積み重ねを経て、見た目も中身もかっこいいおばあちゃんになりたいです!
王さん
真理、得たいですね。命を終える時まで追い続けられたら素敵ですね。目指す目指す。
まずはお節介にならない恩のおくり方を知りたいです。難しい。
timoさん
内藤さんはお葬式の時受付してくれていた。頭の切れるおばあちゃんです。かわいくてかっこいいんだ。
最期の一連がしみじみと胸を打ちます。現代の詩には独特なものは鋭いものが少なくはないと思いますが、こういった心が暖まる詩も必要だと思います。特にいまの世界情勢ときたら。こういった暖かさが切に求められるのでは。それに単に暖かいだけでなく、その底にはある種の哀しみも見え隠れしており、それがまた詩に深みを与えているようにも感じられました。
@佐藤宏
さん。佐藤さんがあたたかいお気持ちで読んでくださったお陰で、書いた本人もあたたかくなっております。ありがとうございます。ひび割れたかなしみにあたたかさが沁みてゆくように陰と陽は仲良しです。
でもかなしいことはなるべく無い方が良いですよね。