片えくぼ
スーパーの食品売り場で
高らかと流れ始める
映画『ロッキー』のテーマsong
バックヤードからは颯爽と登場する
二人一組になって値下げシールを貼り回る
アルバイト達
曲がサビの旋律になれば
すっかりお客さんの熱い視線を浴びている
私も精肉コーナーで
女性陣らの背を分け入って覗いてみようとしたら
「すみません」
か細い声に呼び掛けられて振り返る
そこにはユニフォーム姿でエプロンの左胸に
名札を付けた女の子
「あの、すみません。筑前煮に入れる鶏肉はどれを買えばいいんでしょうか?」
彼女の恥ずかしげで困った表情の隣に
申し訳なさそうな笑みを浮かべて
ペコリと頭を下げた
おじいちゃん
グレージュの薄くなった頭髪
小柄な体格に羽織る
スポーティーなダウンジャケット
その人は右手に持つ一枚のメモ用紙を見せてくれた
達筆な文字が踊る具材には
「鶏肉」としか書かれていない
老夫婦がお二人だけの御夕食
見知らぬ食卓の一品
奥様がいつも作り置きなさるのか
それとなくうかがいながら
グラム数に迷い
一緒にモモ肉を選ぶ心地良い緊張感
「ありがとう!」
私の手渡すパックを受け取る
嬉しそうな、その人の右頬にえくぼがあった
コメント
おはようございます。
とても良い詩ですね。
素敵です。
朝からほっこりさせていただきました。
ありがとうございます。
@ジューン
様へ
読んでいただきましてコメントをくださり、どうもありがとうございます。
ご感想のお言葉、嬉しいです。^^
ジューン様の「ノヴァ」の御詩に添えておられますメッセージを拝見致し
ました。
ジューン様は、別のところ(ネットサイト)で、「詩は喜び。詩を書けること
が楽しい。たったひと言を探して悩むのも楽しい。」と語られておられます。
そのお気持ちは、とても大切だと思います。
ただ文芸サイトでは、周りの空気を読む協調性も必要になります。また、
皆様が公開くださいます御作品の画面は、作者の掲示板でありますから。
独り言の様なプライベートコメントを入れる事などは、やはり作者へのマナーに
反すると思われます。
そこのところを心得て、ご活動なさっていただきたく願っております。m(_ _)m
ごめんなさい。
反省しております。
まことに失礼いたしました。
二度といたしませんので、
どうかお許しくださいませ。
この詩の登場人物たちのやりとりが、おだやかで こころ和みます。それらをうまくとらえて詩にしている。
その人の片えくぼが チャーミングで すてきですね。^^
@こしごえ
様へ
読んでいただいて、ご感想のコメントをどうもありがとうございます!嬉しいです。(o^^o)
この作品は、現フォーで公開した「まち角」シリーズの第29話「おつかいじいちゃん」を改訂しました。可愛いなんて言うと失礼なのですが、気取ったところの無い品の良い男性で右頬のえくぼが印象深かったのでタイトルも変更したのです。
こういった日常の生活詩や恋愛詩を本流として、近ごろは少しずつ趣向を変えた観念的な作風にもチャレンジしてみたいと思っています。
今、公開しています「リズム」の作品が新しい試みなのです。入浴剤の薔薇風呂に入る男性から着想しました。読み手によっては、どうにでも解釈していただけると思います。♪(^^)