散歩
明け方前の雨上がりの道を歩く
もう大晦日だと言うのに
風が少しぬるい
風がざわざわとこの葉を揺らし
カーブミラーには
遠いマンションの灯りが
橙にポツネンと浮かぶ
旗がくーい、くーいと揺れ
1台のトラックが過ぎていく
まだ真っ暗な世界が一瞬光り
視界が真っ白になる
少し遠いところで
ガラ ガラ ガラと
あたりを伺うような音がして
うっすらと明かりが漏れる
空を行く電線に案内されるように
夜の道を歩く
マンホールが景気づけに
じょろろ ろろ ろろ
と声をあげている
空が少し明るくなってきた気がする
うっすらとした灯りが1つ、1つ
マンションの窓が遠く
猫の目のように光り始める
道案内されて歩いてきたと思ったが、
気がつくと道案内は消えている
大きな丘を登って、降りながら
遠く白み始めた空を見て
大通りに出た
この道は分かりやすいが味気ない
ただ、雲の隙間からは星がよく見える
星は意外とまだ高い
そう思っていた空が青み
人が増え街が目を覚ますのは
一瞬だった
川のせせらぎと車のせせらぎは
過ぎれば鬩ぎ合い
僕は夜を置き去りに逃げを打ち
人のいない神社で缶コーヒーをあける
一つを賽銭箱の横に置いて
今年もおつかれさん、と
また家に歩き出した。
コメント
比喩やオノマトペが心地良くて小説の一節を読んでいるような描写の素敵な詩ですね。
あぶくもさん、ありがとうございます。描写むずかしですね