風の駅

庭先には
風で出来た駅があった
物も事も停車しない
すべてが通過してしまう
寂れた駅だった
夜が明ける頃
母は庭に洗濯物を干し始める
それから弁当をつくり
朝食の準備をすると
わたしと弟を起こし
仕事にいくのだった
何かが停車するのを
待っていたのだろうか
時々、風の駅の方を
見つめていた
おそらく擦り切れるだけの
母の毎日の中で
わたしも弟も幸せだった

投稿者

コメント

  1. たもつさんの詩は、どれも? 大切な悲しみに あふれているように感じます。
    この詩、好きです。すごい。

  2. @こしごえ
    こしごえさん、コメントありがとうございます。
    大切な悲しみ、か。確かに悲しみの中には大切なもの、ありますよね。徐々に薄らいではいくけれど、決して消えることのない悲しみ、痛み。ある意味、愛おしくて。

  3. ああ、なんという雰囲気。
    圧倒的に頭に風景と風の駅と母親の心が浮かびます。
    それでも母は子を愛しており。その愛がたまに線路を見えない日々を見つめているようです

    心に強く響きました
    ありがとうございます

  4. @那津na2
    那津na2さん、コメントありがとうございます。生活、って誰もがしているのに、なんだか寂しい気がします。喜びも、もちろんあるのですが、喜びって切ない。

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