朝空
玄関の鉄扉を開けたら
西に、有明の月が浮かんでいた
明るくなりかけている
真冬の湖畔
大きくて黄色い月の輝きは、
叡山の稜線をかすめてしまう
凪いでいる水鏡に照り映える
白練色のムーンロード
樹蔭(こかげ)から飛びたつ
小鳥たちのシルエットが
岸沿いの公園へ舞い降りる
私の足は月の方へ、ゆっくりと
マンションの共用廊下を
踏みしめて歩く
エレベーターロビーまで来ると
小さな胸の高まりもおさまって
駅へ向かう道で
高層の建物に隠れてしまう湖上の月
もう明るくなった
うつし世の空を、見上げてみても
あの孤球は消滅していて
きっと 何も無いのだろうと思えた
この一日の始まりに
捉えようのない夢幻との境を、
目にしたような気がした
コメント
非日常と、日常の境を、うまく表していると思います。そういう瞬間て私の場合、極時々あるかもしれません。そういう時って、なんとも言えない、ふしぎな気持ちになります。それを、この詩は、うまく出している。
リリーさんの筆力が それを実現していると思います。
@こしごえ
様へ
お読みいただきまして、ご感想のコメントをくださりどうもありがとうございます!
お褒めのお言葉を頂戴しまして大変嬉しく、励みになります。(*^^*)
申し訳ございません、(ーー;)第一連目の「あさぞらの」を省きました。(これ、
要らないわ)と、今日になって気付きました。汗ゞ
この作品は叙景から叙情へ流れる、とてもシンプルでリリーにとっては一番表現しやすい一つの型なのですけれども。最終連では、出来るならばもう一歩掘り下げて内面的探求へ、斬り込む必要もあるのだろうと感じています。
@サーラ
さんへ
読んでいただいて、丁寧なご感想のコメントをくださりどうもありがとうございます!
WEB詩人会に対するサーラさんなりの、素直で率直なご意見も拝読しました。
まあ……いろんな事を、私も含めて皆様が思っていらっしゃるのでしょう。
ただ就労を兼ねながらボランティアで運営管理してくださっているスタッフの
方々のご苦労を思うと、マイペースで作品を公開出来る場を与えて貰えている事に、
いつも深く感謝しています。
朝の月は、不思議な余韻が残りますね。その余韻を瑞々しい感覚で描かれています。湖畔の、月。…映像となって、私の脳裡にも浮かんできました。
@長谷川 忍
様へ
読んでいただきまして、どうもありがとうございます!^^
一日の始まりの微妙な時間に、冷たい冬の湖とそこに浮かぶ有明の月の
具体的なイメージを、長谷川様にも連想していただけました事は、
とても嬉しく思います。