移定体

さながら死と傍観の移植である。冬の厳寒のこの河のさらに冷たくする。漆黒のムササビがやがて背後の木立から滑空する。直前に理解されるべき理想世界のコントラッド、やや泪眼の眼科医のガソリン補給のステーションへと。たちすくむ、立ち話はしない、たちしょんのつねにちぢこまる。おっと、ろっと、のっと、ベッドでの会話。つややかなシンボルの形からその四面楚歌にして上下交換。交感のシステムが理解されないままに、札五枚とこうかん、康安元年の厳冬のしまいこまれたシャツに手を入れている。そこには色丹島のおぼろげなトドの声で、飼育された人間の精神的虚無の墓石が立つ。メモリーズは本土の決死隊に我が真情はハツカネズミの実験室から逃げ出そうとする。それらのさらには凍死するこの子たちのさらには解凍してすぐに、熱湯風呂へと案内されると言う。温泉宿の小説家のたばこの煙で、震災で孤児となったアルマジロの声に似たこの子にも、いくつかのシンボルが〈移定する〉のである。そしてそこから思惟されるコントラッド、ベルギー産のこの白いテンの毛皮でその子をつつんであげて。

投稿者

岡山県

コメント

  1. @サーラ
    さんへ、最後の行を解釈することで、わずかな現在が、感覚されるのであれば、それは〈このような詩のスタイル〉としては、良いのであるのだろうと、かすかに感じるのですが、しかし、この現在と言う〈世界へと〉我々が、確実に置かれていることの、なんとも不可解な事実に対して、言葉は、良くも悪くも、冬であるのです。

  2. なんとも複雑なイメージが通り抜けていくような気がしました。行間を想像するのが楽しいです。

  3. @あまね
    さんへ、言葉が引きずっているイメージが、あると言うのに、そのイメージが人、それぞれで、かすかに、またときには大きく、ずれていき、曖昧となり、そしてときには強烈であるところに、言葉を理解することの、むつかしさ、があるようです、そしてかなりの確率で、愛着する言葉との、すりあわされた、木と石と金属、の触れ合う場所に、確定的には言えないもの、を捉えようとする。とてもふらふらと。

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