お赤飯

 お赤飯の赤は
 小豆の赤
 おめでたい色
 おいしい色

 一月一日に日が昇るように
 長寿を願う長い飴のように
 摘みに行ったイチゴのように
 少女の背が変わらなくなるように

 お赤飯の赤は
 小豆の赤
 お守りの色
 つよい色 

 武器代わりに唇にひくように
 樹が次の季節のために葉の色を変えるように
 注意を示す表示のように
 呪いの言葉を書くように

 ハートの赤は心臓か
 愛情の色は赤いのか
 大人になるために必要な犠牲なのか
 散らさねば君の隣にはいれないのか

 紅を引いて
 花を散らして
 赤に埋もれたわたしたち

―――

 そんな私にも
 初潮を祝われた日があった
 真っ赤な 真っ赤な
 お赤飯を炊いて

 おめでとうと言われたけれど
 恥ずかしくて喉を通らなかった
 大好きなお赤飯
 なんだか 怖くなった

 子供を産めるようになることは
 そんなに幸せなことなのか
 まだ赤いランドセルを背負った
 少女だというのに

 私には赤は背負いきれない
 女の子の赤

 ランドセル
 血
 愛情
 口紅

 どれもこれもが
 私の心を踏みにじって
 降りかかってきてしまうから
 体と歳だけ
 大人になってしまうから

 それにおいていかれた私は
 今になってもこんな言葉ばかり
 書き続けてしまうのね
 

投稿者

茨城県

コメント

  1. 強く印象に残りました。
    瑞々しいです。

  2. 赤に埋もれたわたしたち、のところが好きです。いろいろ込められている感じがして。

  3. お赤飯への思いと なずなさんの人生がリンクしているようですね。その語り口が絶妙です。
    ^^

    赤色には、うろ覚えですが たしか、魔除けの意味もあったような気がします。

  4. 大人の女性になるということへの、不安と、哀しみのようなものを想ってみました。でも、そうやって、皆、大人になっていくのですね。そして齢を重ねていく。

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