木
右腕があった場所には干からびた枝
ささくれたリアルな脆さ
二本の足は大地に突き刺さっている
目の前で風に揺れるもの
何千本と立ち枯れていく同胞
整然と並んだ死の行列
声を張り上げ泣くが
それはもう声ではない
遡るようにどこまでも落下していく
21億年前の原始の海にただよう藻
4億3200万年前の最古の植物の化石
9万年前の噴火に焼かれ炭化した杉
人類はその上に立っている
その上に立っているのに
完全なる静寂
捨てられた林の夢を見た
右腕があった場所には干からびた枝
ささくれたリアルな脆さ
二本の足は大地に突き刺さっている
目の前で風に揺れるもの
何千本と立ち枯れていく同胞
整然と並んだ死の行列
声を張り上げ泣くが
それはもう声ではない
遡るようにどこまでも落下していく
21億年前の原始の海にただよう藻
4億3200万年前の最古の植物の化石
9万年前の噴火に焼かれ炭化した杉
人類はその上に立っている
その上に立っているのに
完全なる静寂
捨てられた林の夢を見た
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コメント
植物って興味深い、って最近思います。特に植物の生命について考えさせられます。数千年も生きる木、その木の生命って何だろうと。植物の意識について。おそらく意識はないでしょうが、じゃあ、集合無意識はどうか、とか。植物の個体性について。たとえばソメイヨシノはソメイヨシノ全体で一つの個体なんじゃないか、とか。いや、植物学的にではなく、詩的に、文学的に、哲学的にどうかってことですけど。この詩を読んで私は今そんな想像を膨らませています。
山に入ればいやでも植物ばかりに囲まれるのですが、数年前から植物の名前を調べるのが趣味になりました。名前を調べればその特徴やいろいろなエピソードも知るようになり、いい。
植物も外敵からの防衛方法や受粉もふくむその伝播しようとする周到な戦略を見ると、意識あるんじゃないかと考えさせられることがあります。
「人類はその上に立っている
その上に立っているのに」
がグッと来ます。
人類が誕生したのはたかだか二十万年前、それまでの果てしない時間に植物がこの星を住めるようにしてくれたんですね。
太古地球には酸素すらなかった。
何か考えさせられる、心象に残る夢の描写と思いました。
いやぁすっかり寝汗をかきました。
「その上に立っているのに」というフレーズに、作者の、もどかしさ、惑い、を感じました。遥かな時空に対しての想いでしょうか。夢という設定が、その想いを重層的にしています。
ありがとうございます。夢の中でも歯がゆく地団太を踏みます。