オフィーリア──死の象徴としての

 オフィーリアと言えば、入水自殺を思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし、オフィーリアは自殺したのではないのです、それはあくまでも自死のような死に過ぎない。<これは誤解してはいけないのです>──オフィーリアはあくまでも花に取りまかれ、花に惹かれ、花を摘もうとして足を滑らせたにすぎません。<ハムレット様、早くクローディアス様をお殺しになるがいい!>……オフィーリアは、本当におおくの花に取り巻かれていました。芥子、柳、蕁麻、雛菊。いわく、「死」。いわく、「見捨てられた愛」。いわく、「苦悩」。いわく、「無垢」。
 オフィーリアは夜明けを待っていたのでしょう。夜明けだけを待っていたのでしょう? そうでなければ、あんな風に復讐のように花なんか摘むはずないではありませんか。そうでなければ、あんな風に死など選ぶ、選ばされるはずないではありませんか。
 無垢とはまさしく「罪」なのです!
 さて、オフィーリアの魂はどうなったのか、ハムレットに花を摘んであげたその魂は? 栗の実を食べて泣いたその魂は?
「歌を歌ってあげます」
「歌を歌ってあげます……」
 その壮絶な死は、朝焼けの中に消えてゆく曼荼羅だったのでしょう。雲が千切れとんで、彼女の身も蓋も無い死を、そのか細い身体を、哀惜そのものの墓碑銘を想像するかのように、包みこんでいく……

投稿者

宮城県

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