砂漠──DICTIONARY
砂漠──辞書的に。そこでは全ての音が乱れ飛ぶ。全ての砂が音に反抗している。音楽はない。静寂がある。いや、(SILENCE ?)静寂はあるのだろうか? 静寂すらない。──事書的に。エジプトのナイル川はカイロからアレキサンドリアに向かって流れ込み、それは三角州というもので、サハラ砂漠──ことにギザ付近──から運ばれた砂によって堆積している(こんなとこで歌を歌うものもない)。ラクダと隊商は上弦の月の下をゆるゆると進んでいき……夜が良いのだ……陽気なセレナーデ(それも無音の)に身をまかせている。「浄夜」の響きがここにはあるのだが、わかるだろうか? あなたへの贈り物なのだ──月は寂しげに微笑みをあなたのうつむき顔に落としている。その思わせぶり、女らしいかんばせ! 砂漠に生えるという褐色のバラの花が、今夜化石になってあなたの頭上にふりそそいでいるのだろう!
コメント
千一夜物語の世界ですね。夜の砂漠の美しい風景が目に浮かびます。
@詩偈慧(しげとし)様。
ありがとうございます。壮大なイメージを意図していたわけではないのですが、思いの外うまくは描けたのかな(笑)。