天国のコンビニ

真夜中過ぎのファミマの前で
悪そうな奴らがたむろして
変な匂いの煙草なんか吸ってるから
大通り沿いのローソンまで行くことにして
タイトル忘れた曲を頭の中で流しながら
真っ暗な道を歩いてく夜行性の生き物

21世紀も4分の1が過ぎたっていうのに
相も変わらず山手線は
壊れたメリーゴーランドみたいに
ぐるぐる回り続けてて
その先はどこにもつながってないって
ほんの3日ほど前に教えてもらった
けど誰に教えてもらったのかはもう忘れた

そんなふうにして
わたしたちはなんだかすべて忘れてしまうね
大好きだったあの曲のタイトルや
むかし住んでた街で通ってたバーの名前や
一昨年ブームになったスイーツのこと
あんなに好きだったあの人の名前
そういうどうでもいいものごとなんかと
同じぐらい軽々しく
死んでいった詩人たちの名前も
忘れてしまうことができたら
それはいいことなのかもしれない

だけど
人生の中の雨宿りみたいな時間を
背中を丸めてやりすごす夜には
たぶんまたわたしは
きみのことを思い出すんだろう

午前1時
ちいさなライブハウスの
カウンターの一番隅っこの席の
いいちこのジャスミン割りの
グラスの中で溶けていく氷のように
わたしたちが明日消えてなくなるとしても
そんなに悲しむようなことじゃない
これから何度だってやってくるその痛みにも
気がつくころには慣れてしまうから

そんなふうに
タイトル忘れた曲を頭の中で流しながら
大通り沿いのローソンにたどり着いたけど
終わらせられなかった希望ってやつは
やっぱり売ってなかった
仕方ないね
じゃあ帰ったら
希望についての話でもしようか

投稿者

大阪府

コメント

  1. 変わってゆくものと変わらないものとを見つめるまなざしに愛を感じました。世界への愛。

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