Maybe

別段何の冗談でもなく
私は彼を告発できる

という事実が
なで肩に圧し掛かっている

しかしそれをするとなると
数限りない余罪を披露しなければならなくなる

私のも
私とは何の関係もない人々の過ちも

満天の星空の下で寝転んだりするような
ブルジョワジーな趣味のない退屈な家族だったから

罪とか
神とか

夜通し語り合ったって尽きない話の種も
みんなの夕飯の油いための中に混ぜて食べてしまっていて

なぜ私を産んだの?と真顔で問い返す我が子に
母は「嫌だったわよ」と答えたきり

もうひとりいたはずの兄弟が
死んでいることだって知らなかったわたし

たわし
たわし

人は自分が好きな物を見たがるというよりも
好きな物しか見えないようになっている

彼/彼女の罪が見えるのだって私が見たかったからなのだと
上手い具合に世間は回っていく

もはや好き嫌いではない
これはピーマンやにんじんが食べられないのとは違う

でも
私/たわしは思うのだ

ああ、世界は広いんだろうなぁって
きっともっとずっと思っているよりも遠いんだろうなぁ

この拾メートル先に80円で買える自販機があるのに
160円出して当たるかもしれない自販機を今選ぶような

たとえるならそんな感じだな
馬鹿だったって後で思う感じだよ

彼/彼女/たわしの日常

彼の出す問題が私は好きだから
日がな一日それを解いていてもいいなって考えてはいるけれど

だって簡単に解けるように作ってくれるし
何よりもお駄賃をくれるし

ただそれを一般的な価値観で幸せと言えるかどうかも
少し不安にはなるんだ

私はわがままだったんだなって毎日反省している
きっと首を斬り落とされなくてもマリー・アントワネットは同じことをした

どうしても
どうしても思い出せなくなる詩人の名前があるんだ

その名前を誰かはずっと憶えて伝えていかなきゃならないから
私は私以外の人が生きていることを許せる

これは愛だと誰かが言って
愛は喜劇だと私が笑っている

セルフィッシュを上手く訳せないくらいにバカだから
もう少し生きてみようと思っている

野良猫が歩く四つ足のリズムで
月の満ち欠けを頼りに

君は何を罪だと思うのとたわし/彼女/彼がぱたぱたと
羽根みたいなまつげをはためかせているのが見える


罪ですか

あなたを告発できるだけの人生を私は歩いてきました
たぶん

あなたを告発しないという選択肢を出すためだけに
死ななかった

投稿者

神奈川県

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