詩集
あなたの怒った顔を
見たことがない
いつも少し困ったように
微笑んでいた。
冷静ではあったけれども
時に匂うような情を
私にもくれた。
体温を
きちんと人に晒せる器量があった。
色気と呼んでもいい。
なのに
自分のことになると
きまって少し困ったような笑顔を
浮かべた。
そういえば
一度とて
肌に触れたことがなかったと気づいた。
不思議だった。
もう長い間親しくさせてもらっているのに
握手ひとつ
交わしたことがないのだ。
今日、あなたから
著書が届いた。
古い詩集だった。
コメント
あなたの微笑む顔。あなたのお人柄。あなたとの不思議な距離感。どれも大切なことだろうと感じます。
そして、今日、あなたから古い詩集が届いた。なんというか、この詩は、貴重な物語を読んだような気持ちになります。古い詩集、というのが いいですね。すてき。
ちなみに、青いあじさいの花言葉は、「辛抱強い愛情」などというのがあるようですね。
何気なく、大切な思いが伝わります。
あじさいの微笑みですね。
>体温を
>きちんと人に晒せる器量があった。
>色気と呼んでもいい。
でグッと来つつ、最後の古い詩集でその人との関係性の特別さが伝わる気がします。
大切だなぁ。
こしごえさん
そうなんです、不思議な距離感。少し寂しい距離感、ですね。詩集は、とくに古い詩集は、作者の見えない部分が湧き上がってくるように思います。辛抱強い愛情。…思慮深さにもつながっていくのかな。
服部剛さん
接していて、何というか、寂しさが募ってくる方がいます。大切にお付き合いしたい、という方ですね。
こしごえさん
あじさいの微笑み、いいですね!
あぶくもさん
思慮深さ、かもしれませんね。相手には色気を注げるのに、自分のことになると、困ってしまう。…困らなくていいのに。ちょっと泣けてきます。
褪せ始めたアジサイがすこし大人であろうお相手の雰囲気にあってると思いました。このアジサイのイメージがしっかり詩の風情になって、画詩ってこういうことなんだなぁと。
王殺しさん
写真のアジサイに、「あなた」を重ねたところはありました。色褪せて、なお、ささやかな魅力を放つ詩人に対しての、敬意かもしれません。丁寧に読んでくださりありがとうございます。
少しどきりとしました。
詩集が届くことが特別でありながら生活の一部である、ひとたちの大切な交わりを思いました。
たちばなまこと/mさん
詩集を一冊読むと、作者の、想い、人肌のようなものが伝わってきます。ほんとうに、文は人なり、ですね。詩友は、詩作品を介してのお付き合いですので、密度が少し濃くなってくるのかな、と思います。…もちろん、適度な距離を置いて。