092

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なにやら
胸の奥が粟立って
仕方がないから
五月を
描こうと思った

ところが
緑の絵具を切らしていて
仕方がないから
青と黄の
絵具を混ぜてみたが

五月にはほど遠い

まるで
あなたとわたしの沈黙を
どんなに混ぜても
恋に
ならないのに似ている

そうだ

あなたを呼び出してみよう

その素っ気ない素振り
そのきっぱりした笑顔
その嘘を塗らない唇
その心地好い言葉の乾き方

なにより
あなたが五月だった

投稿者

東京都

コメント

  1. 「五月に恋をする」
    そんなフレーズを浮かべつつ、苦しさも悲しさも、緑の輝きに包まれてゆくような、そんな読み心地。。
    鮮やかです。

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