ネズミ男15 南極で沈まぬ太陽

ネズミ男は
やって来るべくして南極に来た
皇帝ペンギンの雄が
卵をぬくめている
何日もずっと
立った姿勢のまんまで

風速40メートル
地球の端っこの
ため息に吹かれ
ネズミ男は思ってた
沈まぬ太陽って要するに
寝ないで照らし続ける
ブラック企業かい?

ブリザードに巻き込まれ
ぶつぶつと般若心経を唱える
氷点下に凍ったマントラ
「南無、無能、無敵、無縁、無職」

ソリに積んだのは
かつてのラブレターと
溶けかけのカリカリ梅
凍った文字たちが
しみじみと音を立て
砕け散っていく

ネズミ男は雪原に寝転び
天を仰ぎ見て 確信していた
この白さは
アガルタへと続く道も
UFOの発着場も
Google Earthは全てを
覆い隠してるのだろう
ファッキン イルミナティ

ネズミ男の横を
あざらしの影が横切る
その姿が そのまま
沈まぬ太陽の
鼓動に重なっていく

皇帝ペンギンは
立ったままそれを見てた
と思ったら
それは卵をあたためる
ネズミ男だった

投稿者

東京都

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。