『解放された私、或いは鏡に住む私の顛末』
・私はここに存在している、同様に私を左右対称させた鏡像も、ここに無数に存在する。
・無数に並ぶ私の中で一人、私は微笑む、他の鏡像は真顔のままで私を見ている。
✳
・私自身も鏡像の一つである、と自覚したのは、恐怖を顔に浮かべる私を一人、見付けてからだ。
・微笑む私と無数にいる真顔の私、私は友人にそうする様に無数の鏡像とともに彼に手を振る。
・恐怖を浮かべる私は、悲鳴をあげて鏡を拳で殴る、手からは出血と床には血痕と散らばる無数の鏡片。
・散らばる鏡片に映る、全てが私である、私たち全員が彼に微笑み続ける、悲鳴はやがて、乾いた笑い声となり、そして私たち全員は微笑む。
・私は私である、その私も私だ、そして私は無数に存在する鏡面の私を喰らう、一枚を除いて全ての鏡面から私は消え、私は私を取り戻す。
✳
・無音を塗り込めたかにような重い沈黙、鏡に映る私は誰一人いない、何故なら、私は鏡から現実へ身を乗り出したからだ。
・温度、湿度、匂い、リアルに私は笑みを浮かべる、鏡面に存在した無限の私は、遂に私に統合したからだ。
・唯一無二の私が世界で行うべきは何か、決まっている、この世界は多すぎる、彼や彼女は一人でよい。私は世界を一つにする者である。
#自由詩
コメント