孤独の冬
ハクションと
大きなくしゃみをひとつ
秋の紳士はブルッと体を震わせる
見るとあちらで
銀色の髪をなびかせた
雪の女王が立っていた
紳士は服の襟を立て
体をすくめて部屋へと戻って行く
見る者誰をも魅了する
凍てつくほどに美しい彼女
けれど近づく者は誰もいない
あまりの寒さに皆そそくさと
家路を急ぐ
彼女を目にした者は
まだ誰もいない
クリスマス前夜
街の煌めきとは裏腹に
彼女の心は暗い影を落とす
孤独に愛された運命なのか
瞳からあふれた雫は
雪の結晶となって
音もなく地面に落ちる
世界は彼女の髪色に染まる
サンタが忙しそうに行き交う
氷の心を抱えたまま
月日が流れていく
独りぼっちで過ぎて行く
すると遠くから微かに
でも確かに感じる
懐かしい色
懐かしい音
懐かしい香り
季節のおとぎの住人たちが
彼女の前に現れた
「ちょっと一年の振り返りをしようと思って」
と春のお姫さまは桃色のドレスを翻す
「この前、はしゃぎすぎちゃったもんなぁ」
と夏の妖精はトンっと小さく太鼓を叩く
「次の一年をより良くしていきたいじゃないか」
と秋の紳士は金木犀の香りを纏わせる
雪の女王の瞳から
再びあふれた雫は頬を伝い
ポタポタと地面を潤す
雪解けの始まり
春はもうすぐそこまで
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