汽水域

新緑の柳橋をくぐり
船は神田川から隅田川
やがて汽水域
鰡がぽてりと跳ねる
すっかり大人になった、と息を吐く

いつもは若洲の公園から見るテレビ局
20年前に乗ったきりの観覧車
終わりを告げられてばかりのレインボーブリッジ
今日は揚げたての天ぷらを頬張りながら見上げる日

汽水域という場も
点々と浮かぶ屋形船や水上バスも
創造の産物のようだ
これら極楽は
水鉄砲を当てればにじむだろうか
よぎるのは母と乗った水上バスの飛沫が煌めく或る夏の日

浮世へ戻るルート
浜離宮を過ぎると間もなく
取り壊された築地市場
向こうには国立病院があって
更地から組み上げられるかつての喧騒
灰から蘇る極彩色だ
高層階の病室の
眼下を行き交うゆりかもめは迷子なのか
王子の使いなのか
彼らの強い眼は
肉食獣の名残だろう
場外市場でお寿司も食べた
友達は麦酒でのどを鳴らす
強い眼をしていた

今日も帰ることにする
家族になった人と
たくさんの友達と

今日もさようならをする
病院の窓から手を振る人がいたら
教えて欲しい
もう随分と逢えていない
その人かもしれない
 
 
 

投稿者

東京都

コメント

  1. 屋形船に乗りました。
    天ぷらが最高でした。

    私も運営でもなんでもないんですけど、場を見守ってはいます。
    前にたかぼさんも仰っていましたが登録したての方はたくさん投稿したくなるようです。
    個人的に1日に1作品なら開いてみようと思うのですが、2作品以上並んでいると開くことはありません。
    自分は他の方との交流も楽しんでいまして、このサイトには検索機能が無い為、他の方の作品がトップから落ちてしまうと探すのが大変です。よって同じ方の作品が並んでいることに良い印象を持ちません。

    せっかく投稿するなら読んでもらいたいのでは?(出来ればハートも沢山貰いたいのでは)と想像しますがそうでも無いです?

    他の投稿サイト(詩に限らず)でも、現実社会でも“同じ人が場を独占する状況”は好まれない傾向にあります。

    連投する人は他の人の作品を読まない傾向にもあるので、このコメントを目にすることも無いかもしれませんが書き残しておきます。

  2. すっかり大人になった、と息を吐く
    というところに、なんだか ほっとしました。
    私の場合、いつまでもガキのままで いけません。ふふ。

    船からの 情景描写が豊かですね。

    今日も帰ることにする
    今日もさようならをする
    そして、この二行に、さびしさと安心感も感じて、なんだかいいなぁ、と思います。

  3. ユーミンの「中央フリーウェイ」みたいに、全然知らない景色なのに、まるで目の前に浮かんでくるような描写の繊細さがあって、そこに自らの感情が折り重なる。内と外の観察眼が抜群だなー。

  4. こういうロードポエムは情景の中にさりげなく込められる感情がストレスフリーで入って来て心地よいですね。

  5. 汽水域って三文字みるとね、すげー詩情感じるのよね!たぶん僕は今までで一度も使ったことないですね、汽水域!使いたいんだけど、書くとき忘れてるw一緒に風景を眺めている錯覚におちいりましたよー

  6. 移りゆく視点に思い出がからんでいく感じ、好き!

  7. @こしごえ
    さん。
    今日の〜のところに注目してもらえて嬉しいです。
    情景描写は、この詩では厳選してしまったのですが写真を沢山撮りましたー。
    幼い頃から早く大人になりたかった子で、やっと大人になったなと思えています。

  8. @トノモトショウ
    さん。
    お友達と屋形船に乗って病院を見たよっていう詩を書こうとしたらこうなったみたいなやつです。
    いつも自分がいけてると錯覚しちゃうような褒めコメントありがとうございます!

  9. ラストの2連が、切ないですね。病院の窓から手を振る人、を読みつつ想像してみました。…天ぷら、美味しそうだなあ。

  10. @たかぼ
    さん。
    ロードポエムって響きかっこいいですね。
    さらさら書いたので、ストレスフリーに感じていただけて本望でございます!

  11. @三明十種
    さん。
    わかるーって口に出しております。
    汽水域は釣り人なら何気に馴染みの三文字なのです。
    初期のサカナクションのアルバムに汽水域を文字ったタイトルがありました。
    一郎さんはバリバリ釣り人なので納得です。

  12. @あまね
    さん。
    あのひとときは、詩そのものだったと感じています。
    アンカーしていたときのかわいい水の音が心地よかったです。

  13. @長谷川 忍
    さん。
    ラストがはじめに浮かびました。
    いつか終わるひとときは刹那だからこそより愛おしいな、と。
    天ぷら、めっちゃ美味しかったです!
    特に魚が!
    キス、穴子、メゴチかマゴチ(いつも間違うんですけどどっちだったか…)。

  14. 他の皆さんのコメントを読んでホントその通りだな、何もかもが絶妙なブランド具合だと思います。そしてラストの切なさにまたグッと来る。

  15. @あぶくも
    さん
    わーい、です。
    うれしい。たのしいときも少し悲しいというのがデフォルトで生きています。子どもの頃からなんですけど、皆さんはどうなのでしょうね。
    あぶくもさんとも天ぷら食べたいです。(酒飲み交わしたいです)

  16. @あまね
    角上に売っているだろうか。

  17. @たちばなまこと
    屋形船なー、以前は海外の来客接待的に毎年のように乗ってたんだけど、もう7-8年乗ってないなー。天ぷら、食べたい!酒も酌み交わしたい!メゴチも角上で買う!笑

  18. @あぶくも
    さん
    酒は酌み交わすのか!(なんか書いてて変だなーと思ってたんですよ)
    屋形船初めてだったので、なんだこの遊びは、と。
    (関東勢何人か集めて飲みに…是非…)

  19. コメント失礼します。

    鰡がぽてりと跳ねる
    すっかり大人になった、と息を吐く

    ここで、ぽてりとやられました。。
    汽水域って、色としても境目がはっきりみえたりして、面白いですよね。
    なんだかきらきらした絵のイメージが浮かびました。ピンク色や黄色の水面みたいな。

    ぼくも、遠くから手をふったことがあります。よろこびとさびしさの感覚がありました。

  20. @ぺけねこ
    さん。
    ぽてりに心惹かれてくださりありがとうございます。
    汽水域という曖昧な、流動する存在と、その他の同様の存在がレイヤー形成して在るような詩が書けていたらなぁと思います。

    手を振り合うのっていいですよね。

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