6月
蒸し上げられた深い青は鼻腔を支配して
一塊になった粘っこい情念の渦に押し倒される
6月に殺される
紫陽花の萼占いが水蒸気に踊るその様に目を奪いながら奪われ
あなたは強いから
生まれた時から強かったか
強くなれる土壌があったから
あの人が死ななかったら弱かったか
あなたは芯が強いから
強くなろうとしたか
みんな出来ないから
学ぼうとしたか
あなたは出会いに恵まれているから
あなたは自己肯定感が高いから
あなたは溌剌としているから
あなたには才能があるから
誰にでも在る種に目をかけ
日照りでも土砂降りでも虫にやられても
踏まれても蕾が落ちても
投げ出さずに育てたか
私財を投げ打ち時間を注ぎ
挑み続けたか
言葉は選ぶことが出来る
無数のナイフ
信頼の毛布
炙り出す
咲かせたものを振り上げて
手を差し伸べる為の才能ではないか
広げては千切られる覚悟はあるか
拭えない終幕のフィルター越しに今を受け入れて
埃を被った本棚に耀る一冊を開く
6月に殺される
コメント
6月、という なんとも微妙な季節を表情豊かに表してある詩だと感じます。
6月に殺されて、7月に再生する、のでしょうか。結びの余韻がハンパないです。
6月に殺される、か、、、
インパクトがあって口の中で呟いても、面白いな。
6月に、はどう捉えたら良いだろう。
殺される時期が6月なのか、殺しに来るものが6月なのか。自分の中では後者かな。そちらの方が、なんかスタンと胸に落ちる感じがしています。
正義についてぼんやりと考えています。けれどそれは多分、考えているフリで、そうすることによって免罪符のようなものが欲しいだけかもしれない。絶対的な正義などあるはずもなく、結局は自分の中の正義に嘘をつかない、ということを大切にしたいのだけれど、それすらぶれるからな、、、
この詩を読んでそんな思いに至っています。
@こしごえ
さんありがとうございます。
こしごえさんが「ハンパない」という言葉を使われていることに意外性があって、ぶち上がりました。
北海道から出てきて20年経ちますが、いつまでも梅雨が苦手過ぎる上に近年は暑さも増して6月はへろへろです。
@たけだたもつ
さんありがとうございます。
6月に6月の手で殺される、みたいな(笑)人の名前にもなると思いつつタイトルに選びました。
正義があったとしても人に強要しないことを大人になってからは気をつけています。
が、家族友人が傷付けられた場合はまた別なので…ごにょごにょ。
他人の正義で矯正や妬みの対象にされるとしんどいと想像します。それがこの6月のようだと。
再び必ず訪れる6月を割り切る為にも、私にもある『バカの壁』を読み返そうかと思っています。
梅雨時期特有の空気感と、それらが自己に切迫する何かがすごい解像度で表現されているように思います。鬼門のような6月。また6月がやってきた、私を殺しにやってきたと言う感じ。手にした一冊は「倚りかからず」だったのではないかと推理してみたりと言う面白さもありますね。(当然当たってないでしょうけれどw)
前作と通ずる、どこか怒りみたいなものがあるのだろうね。6月を乗り切っても7月は刺殺されるし、8月は撲殺されるし、9月になっても絞殺されるからねー。
@あぶくも
さんありがとうございます。
(絵を描くようにアウトプットしているから?えへへ、です)
朦朧と問答してしまうくらいには殺られている6月。そうなんですよねえ、避けようが無いというのにしつこい6月。
またいい詩集をチョイスしますなあ!
@トノモトショウ
さんありがとうございます。
トノモトさんは鼻歌まじりに殺され方12ヶ月とか書けちゃいますね。
殺すという言葉の使い方、一般の人が知らないシリーズで。我が業界では“いせこみを殺す”ってのがあるんですよ。他にも何か不具合を消すことを殺すと使います。
ここのコメント蘭は殺すって目にしすぎておかしくなりそうです。
6月に殺される、というフレーズが鮮烈でした。夏至フェチですので、6月は私にとって特別な月なんです。6月に殺される、という感覚はわかります。今頃の季節はそういう空気感がありますね。
@長谷川 忍
さんありがとうございます。
夏至は素敵ですよね。(フェチ!)
これからは日が短くなる一方で寂しい反面。日没が早い方が少しでもこの暑さが緩和されるかもしれません。
概念として大切なものが何度も殺される感覚が止まない時があります。波はありますけれど。