書き置き
声帯が未遂に終わった
夏の初めの頃
植物は止まり
蟻の巣は時間をかけて
退廃していった
立てかけられた
日傘、と
ひとつまみの酸素
光化学スモッグの半日は
残務整理に費やされた
川の清い流れが時々あり
訪問医のポケットから
漏斗が溢れては消える
そんなことの繰り返し
点呼の済んだ風の切れ端が
段落の隙間を埋めていく、と
それはおそらく
行方を晦ましたわたしたちの
書き置きだろう
声帯が未遂に終わった
夏の初めの頃
植物は止まり
蟻の巣は時間をかけて
退廃していった
立てかけられた
日傘、と
ひとつまみの酸素
光化学スモッグの半日は
残務整理に費やされた
川の清い流れが時々あり
訪問医のポケットから
漏斗が溢れては消える
そんなことの繰り返し
点呼の済んだ風の切れ端が
段落の隙間を埋めていく、と
それはおそらく
行方を晦ましたわたしたちの
書き置きだろう
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コメント
一行目からバイブス上がりました。
訪問医のポケットから
漏斗が溢れては消える
相変わらず天才かと唸りました。
初夏の空気感と、物語の不安定さにやられました。段落の隙間を埋める風の切れ端ってなんて素敵なイメージだろう。
詩的情景描写の おもしろ味を感じさせる詩であると思います。
それはおそらく
行方を晦ましたわたしたちの
書き置きだろう
そして、最後の方、ここで、いいね、を決めました。
@たちばなまこと
たちばなまことさん、コメントありがとうございます。
訪問医も漏斗も今まで使ったことないなあ、と思っていて、いつか使おうと。
病院に勤務していたことがあって、院長先生が自ら暑い最中でも小さい車ででかけていて。漏斗は与えられた機能があるのに、何か形状の美しさと不完全さのようなものがある気がします。
@トノモトショウ
トノモトショウさん、コメントありがとうございます。自分で書いたくせして、段落の隙間を埋める風、気になります。
満たしていく、そしてさらっていく。そんなことの繰り返しなのかもしれませんね。
@こしごえ
こしごえさん、コメントありがとうございます。時々無性にこしごえさんがおっしやる「詩的情景描写」を書きたくなります。暴力的に、といっても過言ではないかもしれません。毎日、どこかで、読まれることのない書き置きを書いている気がします。