犬の名前

犬の名前を並べる、
タロー、ルル、ブンタ、シロ
そのことを悔い、
喉元にキムチの色を塗りつけて、
俺たちは、見つめあった

北の城壁が高く聳えていた
たぶん、高さは、
喉の渇きで測ったものだ

勃起という生真面目さが、
疲れた日々のどこかで揺れている、
病んだ娘が、ケラケラと笑った

死を与える鉄の玩具と、
商店街と、
欲情に名前を授ける
神の巫女たちの立つ路地裏

一杯十円の肉うどんを、
誰も疑いもしない
昼メシのポチをすすりながら、
おまえは誰だったのかと
そっと、暗い背中が問いかける

焦げたソースの臭いが
鼻腔にへばりつく夕暮れ

オモニの焼いた粉モンが
名前のない女の指で弄られ、
ビールの栓を抜いて、
俺と紅い唇へと運ばれる
ふたつの口が、
やがて、手と手を辿りあった

いつしか俺の中に、
高い城壁の影は沈んでいた

タロー、
ルル、
ブンタ、
シロ。

その名を呼ぶとき、
今では憎しみさえも、
なぜか愛おしい

投稿者

大阪府

コメント

  1. これが仰有っていた犬の名前の詩なのですね…いったい何のことだろうと「?」でしたよーキムチ・オモニって単語と犬の名前が並ぶといかにも不穏で…いけないことを連想してしまいましたよー僕の好きな路線のとてもいい詩だと思います。

  2. @三明十種さまコメントをありがとうございます。

    作品中、色々とヤバイ小道具を使ってしまいましたが、ボクのアタマの中では映画「パルプフィクション」のラストの話との比較があるので、アレよりはマシだと思って書きました。一杯10円のポチも、ワザと時間軸をズラシて、かなりあぶない橋を渡っています。

コメントするためには、 ログイン してください。