コアントロー
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「エイプリルフールの朝一番の嘘だけがぜんぶ本当なの。それ以外はこの身体が嘘ついてるの。一緒に寝たらぜんぶ嘘になるの。排泄で失う自分なんてぜんぶ架空なの。ひとを借りたらひとが嘘つくの。嘘の日が本当よ」
アンニュイって文字だけ覚えたふたりだったからコアントロー飲む
静かな場所で
ひと
求めたから
余計な
おまじない
一つ
増える
「寂しいね」
「なぜ?ここでおれがいるじゃん」
「話過ぎたら寂しいのよ」
冬が 残って
雨が 落ちて
呆然と
ふたりで葬列を見送る
ぽっかりと
穴が
開いて
ことばが
零れる
どこへいく
いまがほしい
「嘘の日だから嘘をついて」
「ごめんな、嘘しか言わなかった、今までな」
おなにーも
せいりも
なくて
まっしろ
だったら
良い
人間
なれるのに
「いまここが詩に描けない」
「通り過ぎたら物語見えてくるのよ」
暗がりで
舌を
こねて
愛し合う
唇だけでも
魂
入る
話さない
「向き合ってるのに気持ちよくて 孤独ね 対面座位って」
「懐かしいな 初めて入れあった頃」
無意味に
上手くなった
せっくす
「急いで口で吸うけど噛んじゃったらごめんね」
泣きそうに震えた
「確かさは
人を
決めるの
此処は
曖昧の方が
美しさもある」
「タマシイ
なんて
歌なのさ
おとなじゃ
ないけど
こどもでも
ないさ」
「おやすみね
なまえを
呼んでいて
いくらでも
ちぎっていいよ
毎日を」
灯りを消さず
思った
ひとりぼっちで
ふたりぼっち
時計
抱えて
ベッドで
猫
間に
挟んで
寝た
猫を
撫でたら
猫も消えた
なにか
求めた
「また動物なろうよ」
「おれ、キリンな」
「あたしカモシカ」
何者にもなれやしない
詩や
MacBook
部屋の
二人を
見捨てる
女は
コアントローに
話しかけたかった
「寂しかった」 と 求めた
「終わっとくか?」
パキシル 嗤う
俺も 笑う
「下らん人生だったさ」
二人で
廃棄する
過去
ガラクタ
なりに
考え
この
今を
選んだ
「きれいに燃えたね」
眺める
燃やした過去
包囲されて
メビウス
吸った
「今に始まったことじゃないさ」
「ファックしようよガラクタみたいに」
燃え尽きた
明日は
どこで
生きるだろう
どこに
明日
見つかるだろう
「・・・・・・バカだったね、あたし」
「アホだった・・・・・・おれ」
「だから出会ったんだ」
「ほんと、それな」
「孤立してくね」
「まだお前がいるさ」
カードゲーム
耽る
ふたり
深夜
ババ抜きした
「あのね、なぜ、おれだったの?」
「詩が書けたから」
ババが残った
ホームスチール挟殺プレイで走者二人アウトの人生
「挟殺?茶番じゃん」
「ダセえよ、それな」
ダラダラ
待つ
二人で
待つ
人々の間
失踪した 人生
証明書もなく 終わる
「ふわふわね」
生まれたまま
心
隣いて
お腹いっぱい
気絶する
「終わり方、ロマンティックがいいな」
「共食いでもする?」
「腐ってるよ、おれ」
結末って文字だけなぞって、ふたりだけだけど、コアントロー飲む
「いつかになったら
いつか葬るの
屍一つ残したら
ダメよ」
詩は
終わらない
詩はずっと残り火だ
闇夜を
照らす
ふたりが
浮かぶ
何もなかった
何者でもなかった
愛の
ようなもの
残る
終わり。
「真夜中に魂を悼んではいけないんだ。現在が泣き始める。灯りを河に落とした女の子みたいに。灯りは真夜中のお前の魂のつらさを知っているさ。お前は呟く。お前の魂の悼みを。現在はおまえを包むさ。たとえお前が拒んでも」
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