099

099

想い出したように
鳴る

風鈴が
躊躇うように

あなたが
幼い頃の話をする時のように

鳴る
風鈴が

逃げる風を追い駆けようとして
諦めたように

鳴る

あなたの後ろ姿は
熱気にほとんど塗り潰されて

鳴らない
もう浴衣の柄すら想い出せない

汗が
何も吹かない胸の奥を伝う

伝う

夏とは名乗らせたくない
この煮えたぎった時間の中で

風鈴だけが

鳴る

投稿者

東京都

コメント

  1. あなたと風鈴とこの詩の話者(もしくは、作者)が、切なく響きます。すてきな空気感の詩ですね。^^

  2. 写真が素敵です。風鈴って日本人らしい感性の賜物だなぁなんて思うわけですけど、そこにまたnonyaさんの切なさの表現が乗っかって絶妙な詩になっていますよね。
    そして099ですね、いよいよですね!

  3. “逃げる風を追い駆けようとして”
    のように掴めない感覚、nonyaさんの作品の個性だと思っています。(好きな雰囲気)

  4. なんだかせつなくて、
    でもとても素敵な詩ですね。

    お写真もまさに

    「想い出したように
     鳴る

     風鈴が
     躊躇うように」

    の瞬間をとらえているようで、
    とても惹きつけられました。

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