僕のお父さん

僕のお父さん

僕のお父さんとお母さんは愛し合っていた
だから僕が生まれた
父さんとお母さんの愛が崩れた時、生まれたものは何もなかった
僕のお父さんはどこにいるのだろう

左耳は枕に押し付けた、片耳に侵入する罵声
母は疲れている父さんに文句を言った
父は母さんに言い訳をして文句を言った
眠れない夜の子守唄
日に日に喧嘩は少なくなっていった
僕のお父さんはどこにいるのだろう

お父さんのスーツが消えた
「あの人は私たちを捨てたの」という母さん
僕にはわからなかった
離婚しようと切り出したのはお父さんか母さんか
それはお父さんに聞いても分からないかもしれない
すでに僕のお父さんではないから

おばさんの家に行った時に「お父さん似の顔ね」と言われた
授業参観で誰かのお父さんを少し羨ましく思った
僕たちはお父さんとお母さんの血を引いていると教えてもらった
僕の血管も半分はお父さんの血が入っている
僕のお父さんはどこにいるのだろう

お母さんの疲れた顔を見ながら、今日もまたそんなことを思った

投稿者

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。