通り雨

 激しく降った雨で
 駐車場の水溜りをよけながら歩く
 スカートの裾が纏わりつく

 建屋の脇にある竹林の小径
 聳り立つ竹の
 薄赤く枯れた葉葉は
 陽を吸いこんで
 はらはら 散りおちる

 雨滴はずませて
 揺れはじめる黄色を帯びた一群に
 夏鶯の、一ふしが
 したかげからはいのぼり

 もう遠のいてしまった
 胸の緑陰
 足に絡む蔓草の小さな棘に
 指先が触れたかもしれない痛み 
 その残響を 
 錯覚だと思いたかった

 けれども薮のしずかさに手招きされる
 佇んでいたわたしの影法師は
 夕空へ、溶けて

投稿者

滋賀県

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