家路

父と二人で酒を飲んだ
案の定私は涙が止まらなくなって
気づくと声を荒げ
父を責めていた
飲み続けた
やめられなかった
リビングに敷いた布団の上で
父は目を閉じていた
俺も時々泣くんだ
暗闇の中で
ぽつんと
呟くように言った
次の朝
目が腫れて酷い顔をしている私に
ちょっと荒川散歩してくる
と言って父は出かけた
テーブルは散らかっていた
コップに残った酒やつまみを
片付けて
顔を洗った
もしかしてと
嫌な想像が頭をよぎる
泣きながら河川敷に向かっていた
ごめん
必死に探した
私はいつも人の大切なものを奪う
遠くに
橋の欄干から川を眺める父を見つけた
私が泣きながらある告白をするのを
父は黙って聞いていた
死なねえよ
家までの道を二人で戻った
親子みたいに

投稿者

東京都

コメント

  1. 最後の言葉で親子のつながりが…。救われた気がしました。テーブルを片付けるという描写になぜか惹かれました。

  2. @腰国改修/降墨睨白島
    さん
    こんなに飲んだか!?てね。

  3. リアリティがあるなあと

  4. 母に対してもそうだし、娘に対してもそうなのだけれど、ずっと親子ごっこをしている気がします。親子、って世界で一番寂しい単位。

  5. この物語でタイトルが家路って言うのがなんかたまらなく良いです。

  6. @腰国改修/降墨睨白島
    さん
    ありますよね。

  7. @たけだたもつ
    さん
    親子ごっこ、よくわかる気がします。父はどう思っているのだろう。娘さんいて良かったです。父を大好きだからです。

  8. @あぶくも
    さん
    ありがとうございます。ヤベー物語です。

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