【連載詩】3. 中国女
僕は高校生になったが
周りとはうまく馴染めずに浮いた存在だった
いつも正義や空間や資本主義について
あーでもないこーでもないと考え続けているような
気難しく厄介な奴だったからだ
唯一話しかけてくれたのは隣の席になった女子で
名前を聞いてもはぐらかされて教えてくれなかったが
在日中国人の二世であるとクラスで話題になり
それなりのイジメがあったようだ
その女子は映画研究部に所属していて
「マルクスとコカコーラの子供たち」という
聞いたことのあるようなないようなタイトルの
自主映画を撮っているらしかった
表現したいことは何もないけど
世界に対する怒りだけはあるのよ
というのが口癖だった
完成したら見せてあげると言われて
その女子が一人で暮らしているというアパートにお邪魔した
殺風景な部屋でテレビとベッドくらいしかなく
中華料理屋でよく見る謎のタペストリーが何枚か壁に揺れていた
映画はまったく訳がわからなかった
普段から正義や空間や資本主義について考えているくせに
いざ難解な思想に関するダイアローグを聞いても
頭の中でぐるぐると言葉が駆け巡るだけで
どうしたって意味へと繋がらなかった
だがわからないと感想を述べるわけにもいかないので
仕方なくその女子の肩を抱いてキスをして
そのまま互いに裸になって
あそこをあそこに入れた
行為が終わってから僕は囁いた
好きだよ
もちろん嘘だった
コメント
もちろん嘘だった
という最終行に 持っていかれました。
たよねーって言うオチなんだけど、あながち嘘が真になるような匂いもしていて、実はそこからどっぷり行ってみたいクチなのだな自分は、なんて再確認させてもらえました。って何のこっちゃ(^^)