心の時計
心の中に時計がある。
数字なんてそこにはなく、
数えきれない針が
なめらかに動いていて
無限に奥行きのある、
そういう時計。
その時計はすごいんだ。
素直な反応として針が勝手に動き、
生粋の感情を指してくれるんだ。
でも、
誕生日を何度も重ねていくうちに、
自動化する針が増えていくんだ。
みんなもそうでしょう?
なんとなく世の中に存在しているマニュアル通りの反応を、
時計という、
まったく気づかない身体の部分で
行ってくれているんだ。
それはすごくありがたいことなんだ。
社会に生きるにはね。
でも、そいつが
あるときから
かくれんぼをするようになった。
少し無理をさせていたんだろう。
それに参加する針が多いほど、
私は大変になるんだ。
いなくなった針の役割を
脳みそが代行して
擬似反応をつくらなきゃならないからね。
私は針たちに
「どこにいるの?」と問いただしても、
一本として答えてはくれない。
その針が戻ってくるのを待つことしか、
私にはできないんだ。
でもね、
脳はその役目がへたっぴなんだ。
そしてすぐに疲れてしまうんだ。
困ったことにね、
私の脳はまだまだ未熟で、
すぐに自暴自棄になるんだよ。
そりゃあそうさ、
何もないのに
無理やり反応を起こそうとしているんだからね。
そして脳が命令するんだ。
ーーシャットダウンしてしまえ
私は昼間
ベランダで眠らされていた。
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