猿の手癖
腫れた空、真赤だ
空き店舗だらけの高層ビル
年を越せなかった男の落下
その速度は音を追い越して
光をも追い越した今、ただいま
文具と女子がそれを眺める
玩具と男子がそれを眺める
男子の玩具にされる女子も
女子の文具にされる男子も
それを眺めている
道路に落ちているおれの腕
屋根に登っているおれの脚
業務スーパーに売っているおれの心臓
はま寿司に流れているおれの関節
深夜一時か二時
精神病棟にともる常夜灯をたよりに
おれは自分自身の姿形を確認する
まだあるようではあるが
十四歳の頃とくらべると
かなり減ってしまっている
けれども成人になってから身についたこの手癖の悪さがあれば
とりもどすことなど容易だ
いまだって見覚えのない柄の靴下を履いていることだし
コメント
静かに迫ってくるような言葉たちでした。