エジプトの太陽わ

砂漠の縁で
黒い背中の甲虫が
丸めているのは
ただの糞ではない

それは
世界を照らす球体
崩れやすく
重たく
腐臭を放ちながら
命を孕んだ太陽だ

人は鼻をつまみ
その姿を笑い飛ばす
だが彼はひたすら転がす
転がして転がして
地平線の向こうに運ぶ
何のために?

崇高も卑俗もない
光は汚物から生まれ
汚物は光に姿を変える

汗に似た甲虫の体液が
砂に滴り
道標となる
彼の背後に残る轍は
神話の始まりの線

誰も見向きもしないものを
抱え続ける者こそ
世界を動かす
一隅の光

小さな角の影が
夕日と重なり
転がされた糞玉は
昇る太陽に化けていく
スカラベ

投稿者

東京都

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