まあ、いいか

通勤、混み合うホームで並ぶ
この人間たちは
果たして存在しているのか
そもそも人間なのか
確証は何もない

笛を激しく鳴らす
やはり
眼鏡をかけた全員が
鼻を抑えてしゃがみ込む
おおいぬ座α星系の宇宙人だ

右靴ひもを結び直し
そのまま軽くジャンプする
マスクをした全員が
同じ動作をしている
みなみのうお座α星系の宇宙人だ

なるほど、ではこれはどうだ
両眼から
赤色のビームを天空に放つ
雲が、瞬く間に散っていく

ホームにいる全員が
こちらを見ている
と、悲鳴を上げて逃げだした
あ、そうか
ここは、第六平行世界の地球だ
間違えた

仕方がない
ビームを逃げる通勤客に向ける
次々と消滅していく
ついでに
駅も電車も消してしまおう

見渡す限り、誰もいない
荒野が広がっている

まあ、いいか
そろそろ
元の世界へ戻ろう

投稿者

大阪府

コメント

  1. 雑踏の中で、この人たちみんなに心があるのだ、と思うと、そのことの重さに時々吐き気がします。

  2. @たけだたもつ 様
    同じ感性を持つ人と出会えたことに感謝します。
    ありがとうございます。

コメントするためには、 ログイン してください。